かつて日本製のゲームが世界を席巻していた時代は遠く、世界から置いてけぼりをくらったゲーム開発にあって「なぜそうなってしまったのか」からどうしなければならないのかーーーせめてこのくらいは、までを小さな物語としてまとめられた作品だと私は思った。
「とにかく発売すれば儲かるし、がむしゃらに作り続ければいい」
そう信じられていた時代はリアルに存在していたし、今でもそう思い続けプロジェクトを燃やす作中登場人物のような人々は、空恐ろしいことにまだ存在する。
私はあのレガシー極まる開発スタイルを「出来損ないの文化祭」と呼んでいるが、物語が佳境を迎えるにあたり"俺"氏が現代的な開発プラクティスを取り入れていくことで、プロジェクトは息を吹き返していく。
(そうこの物語はBAD ENDではなかった!安心して読めるのだ!)
ゲーム開発プロジェクトには本当に多くの人が関わってくる。
この物語は、そんな癖があって我の強い創作人たちのベクトルをどう整理して、どう行くべき場所へ導いていくかが重要である、と言っているように思える。
一応はフィクションである(と思われる)ので、Redmine本格導入時に社内の抵抗勢力が出てこなかったり、あんなところであんなに聞き分けのいい展開になったりする。
けれど、プレイヤーに夢と希望を与えるゲーム開発にも夢と希望があったっていいのだ。
人よ、ゲームを遊べ。そしてあわよくば作れ!
ゲームを創る――ゲーマーなら誰もが憧れる話だが、クリエーターからすればこんなに厄介な仕事はない。
わかり易い文章で現実を語られる物語は、頭に入りやすく実にシビアな事を伝えてくれる。読んでいる最中は、下手なサスペンスよりもスリリングでこれからどうなるのだろうと思って続きを待っていたものだ。
最後はどういうふうにもっていくのだろうと思っていたのだが、最終話で全てが腑に落ちた。複数人で一つのものを作るのは難しい。まして、それが会社のプロジェクトというのなら尚更だ。
あくまで個人的な見解だが、その答えが「同じものを見ろ」に集約されているのではないだろうか?
対立はあれど、それぞれは敵ではない。
完成というゴールに向けて必要だからこそ、ガチでぶつかりあう。
それが、「同じものを見ろ」と言う一言に集約されているのではないか――それが、読後の感想だ。
序盤はつらい話が続くが、あくまでそれは過去の話。反転攻勢に出ることは分かっているのでドキドキしつつも安心して読んで行けます。
問題はその反転が何時なのかってことだけれど、プロジェクトは救いのないままに、これでもか?これでもか?と墜ち続け、も、もうこれ以上は……というところから更に3回ほど堕ちるイメージです。
そうして漸く主人公の登壇と静かな、それでいて大胆な反撃が始まる訳です。めっちゃカッコいいです。惚れます!序盤は希望に辿り着きたくて。後半は活躍に胸を弾ませながら一気に読んでしまいました。続きが待ち遠しいです!!
※19話時点での感想です。