くらえ!! ロケットパーンチ!! ※本編とは無関係

ちびまるフォイ

お前はもう操られている…!! \あべしっ/

現代人は忙しいので四肢がバラバラになりました。


頭と腕は職場でキーボードをたたきながら、

胴体と足は家のベッドでリラックス。


これが新しい仕事の形。


さぁ、あなたも体を切り離して充実した遠隔ライフを!!!


「いやぁ、やってみたけど、これ便利なものだなぁ」


CMにそそのかされて四肢を分断してみたところ、

悩みだった職場での肩こりもなくなって楽なことこの上ない。


最近では家でテレビを見ながら、遠隔操作している両腕が仕事をしている。


胴体と足だけは別の場所に買い物を行かせることもできる。

ストレスからも解放され自分の時間をめいっぱい使える。


「さて、今日はなにをしよ……ふぁ……ふぁ……」


寝転がっていたせいか、髪の毛が1本鼻の上に落ちた。

むずむずとこそばゆい感覚が止まらない。


でも両腕も両足も胴体も今は近くにない。


「ふーー! ふーー!!」


口をすぼませて息をかけて毛を吹き飛ばそうとしても取れない。

意識すればするほどにかゆみは増えていく。


「あああーー!! もう我慢できない!!」


たまらず両腕を這わせて自宅まで戻させる。

鼻の頭に落ちた毛1本落とすために。


「ふぅすっきりした……でも、これ意外と非効率かもしれないな」


体がかゆくなったときはどうしよう。

くしゃみで鼻水が出たときはどうしよう。


その都度、両腕を戻らせるのはかえって非効率だ。


かといって、体全部を職場においておくと

治りかけている胃潰瘍がまたぶり返す可能性もあるし……。


「あ、そうだ義手とかつけてみようかな」


今ではコンビニくらいの間隔で見つけられる義手店へはいった。

事情を話すと店主はニコニコ聞いてから、絶望宣告した。


「む り だ ね」


「ええ!? 義手ダメなんですか!? なんで!?」


「遠隔操作で切り離していると言っても、

 あなたの体と四肢はつながっているんですよ。

 そこに、別の体をつけたら遠隔が分断されちゃいます」


「なるほど……」


「あ、でも力になれる人は知ってますよ」

「本当ですか! 教えてください!」



「いえ、もうあなたの後ろに……」



「怖い怖い怖い!!!」


振り返るとネコミミメイド服の女がいた。


「こんにちにゃん♪

 超絶電子技工士1級のにゃんちゃんだにゃん♪」


「肩書きとキャラが合ってなさすぎるんですけど……」


「あなたのように新しい体をアタッチメントしたい。

 そんな夢を持つ人は多くいるにゃん。

 そこでにゃんちゃんは新しい端子を作ったんだにゃん♪」


女は透明な液体を取り出した。


「と゛こ゛て゛も゛ワ゛イ゛ファ゛イ゛~~」


「ボケなくていいですから、内容を教えてください。

 その液体はいったいなんですか?」


「これまでは、四肢を分断して遠隔操作するには

 切断部分に固形端子を差し込む必要があったにゃん?」


「まあそうですね」


「でも、今度はこの液体をなじませるだけで動かせるにゃん♪

 しかも、いくつも遠隔操作することが可能。

 ここまで開発するのに10年かかったにゃん♪」


「それはすごい!

 液体を入れるだけで、いくつも操作できるなんて!

 むしろ10年でできたのが短すぎるくらいです!」


「あ、でもほんとは1年で完成したよ。

 残り9年で、軟水にしたり無味無臭にしたり透明にするのに使った」


「その労力ぜったいいらいないですよね」


「まあいいから塗ってみるにゃん♪」


さっそく、本来の体とは別の廃棄体の両腕切断面に液体を流した。

するとまるで最初から自分の両腕のように動かせる。


「おおおおお!! すごい! ありがとうございます!!」


「充実した遠隔ライフを楽しむにゃん♪」


両腕が2本追加されたことで、ますます便利になった。


これまで同様に両腕だけの職場出勤をさせて、

胴体は家の中で好きなだけゴロゴロできる。


今度は両腕があるので、顔がかゆくなってもかくことができるし

さらにはゲームまでプレイできてしまう。

仕事しながらも堂々と家でゲームできるなんて幸せすぎる。


「ああ、こんな生活がずっと続けばいいのに!」


こんなことを言うものだから、本当に不幸なことが起きてしまった。

なんでもないある日のこと両腕がいつまでたっても戻ってこない。


脳にはつながっているので腕が何かに身動き取れない状態にされているとわかった。


「ま、まさか体泥棒!?」


人体遠隔操作ができてから出始めた体泥棒の噂。

でも、まさか自分の体は狙われるまいと安心していた。


「あああ! どうしよう!! 俺の両腕が!! 俺の両腕が!!」


腕が捕まって変な実験をされたらどうしよう。

切断されているとはいえ、感覚は共有しているから

もしかしたら変な注射を打たれて脳に悪影響が出るかもしれない。


警察に頼っても「どれがあなたの腕かわからない」と動いてくれない。


「それがわかったら、こんなとこに来てないですよ!!!」


警察に八つ当たりして駆け込んだ先は、前に訪れた義手店。


「いらっしゃ……どうしたい、そんなに慌てて」


「はぁっ……はぁっ……うで……ぬすまれ……はんにん……」


「と、とりあえず落ち着くにゃん。

 頭がパニックになると、遠隔操作が混線してバグるにゃん。はいお水」


「す、すみません……」


水を飲んで一息つくと、これまでの経緯を話した。


「というわけで、俺の両腕が誰かに盗まれたんです。

 感覚は共有してるのでどこかに運ばれているのはわかります」


「まかせるにゃん。

 そういうときのために、私がいるにゃん♪」


女はパソコンを開いて何やら探し始めた。


「なにしてるんですか? 警察の通報はもうしましたよ?」


「ちがうにゃん。液体端子はwihaiでつながっているにゃん。

 感覚がつながっているということはそう遠くない場所にあるし、

 wihaiを逆探知すれば場所を特定することもできるにゃん♪」


「手際よすぎますよ! ありがとうございます!」


「見つけたにゃん♪」


とんとん拍子に敵の潜伏先を特定した。

感付かれて逃げられるわけにいかないので、ひとりで乗り込むことに。


とあるふ頭の使われていない倉庫の中に俺の両腕はあった。

両腕の前に、痩せた男が見張り?に立っている。


「見つけたぞ!! 俺の両腕を返せ!!」


相手を威嚇するのと自分を鼓舞するために大声を出した。


「やめてくれ……もう助けてくれ……僕は騙されたんだ……」


痩せた男は何かぶつぶつ言っている。

どう見ても現行犯なくせに言い逃れする度胸がすさまじい。


「いいから俺の両腕をかえせ! この!」


男をはねのけ、ガムテでぐるぐる巻きになった両腕を自由にする。

やっと自分の両腕が使えると、真っ先に男を殴りつけた。


「俺の腕を盗みやがって!! 金がないなら自分の腕でも売りやがれ!!」


「ちがうんだ……ちがうんだ……」


「まだ言うか!!」


「僕は騙されたんだ……こんなこと望んじゃいない……。

 女に水を飲まされて、それからずっと操り人形なんだ……」


「はぁ? 何言って――」


そこまで聞いたとき、全身の身動きが取れなくなった。




「うふふ、ちょうどよかったにゃん。

 そいつ古くて接触悪くなってきたから捨てるつもりだったにゃん。

 新しい操り人形が欲しかったところにゃん♪」



女は俺の体を遠隔操作し、俺に他人の両腕を盗ませた。

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