バンド、音楽を取り扱った作品は数あれど、ここまで生活感のある作品はないのでは?
溜め息を吐く間さえない程に逼迫した「現実」。
そう、彼女らには音楽だけではなく、できれば見たくもない現実が存在している。
逃げ出す事も難しいこの世の中で、目を逸らさず向き合って、折れない心で音楽を奏でる。
彼女らのロックには、不自由の中にあるからこそ存在が許された自由が溢れている。
必然的な奇跡が溢れている。それは太陽が暖かいと言う奇跡。
人間と言う一個の生命が、太古に忘れ果てた当たり前の真実。
それを思い出させてくれるロックナンバー。
私はこの作品に出合い、読者としてのみならず作者としても救われ、新たな扉を開ける勇気を得た。
これは奇跡なのか。
いや、彼女らがただ音楽を辞めなかった必然が結んだ真実だ。
あなたもこの爽快なロックナンバーを聴いて、最高のカタルシスを味わってみてはいかがか。
全世界のロックファンの皆様!
今回レビューで紹介させていただくこの小説は、音楽の小説です。
ジャンルはロック!
私は、ずっとこんな物語を待っていました。
最低で、最高で、それでも常に前を向いて走り続ける青春のお話。
バカにされ、痛めつけられ、押さえつけられ、不幸のどん底に落ちて、それでも才能を胸に秘め、音楽を手にして戦い、走る。
血沸き、肉躍ると言う表現が正しいでしょうか。
このお話を読むと、無性に走り出したくなります。
いじめ問題、大人たちの偏見、家庭の事情、伝統芸能の跡継ぎ問題、吹奏楽部とのちょっとしたいざこざ。
悲劇的、あるいは危機的状況のそれらをあの手この手で上手くかわし、時には実力や真心でぶつかり合い、そうして乗り越えてい行くことへのカタルシス!
主要人物は全員女性(敵役以外)で、バンドメンバーは全員女子高生ですが、洒落っ気少々、理不尽さへの反抗心たっぷりと、大分硬派なものとなっております。
バンド経験者なら、楽器を手にしてしまう事、間違いなしです。
私も、埃だらけになったギターや、傷だらけで机の隅に置いてあるドラムスティックに触りたくなりました。
文章は読みやすく、1エピソード当たりの文章量も決して多くないのですが、続きが気になって『次のエピソード』のクリックが止まらない。
そして最後まで読んだら、こう思うでしょう。
「彼女たちの物語の、続きを読んでみたい……!」
もっと、もっと評価されて欲しい、大好きな作品です。