とても面白く拝読しました。
遥か未来の宇宙が舞台であり、現実には存在しない未来の兵器といった科学技術が登場する一方で、それらの科学技術を現代日本、あるいは英国の法制度によって運用している点が奇妙で、なんともいえない可笑しさが本作品には存在し、その点が異彩を放っているように思います。
ただ、あえて難点を指摘すれば、登場人物の台詞回しが少し大時代的で、結果として、はるか未来の宇宙が舞台でありながら、現在の世界、日本の法制度や国家機構のあり方と地続きになっているという本作品の魅力を毀損しているのではないかと感じてしまいました。今後は、もう少し、ある種、ステレオタイプ化された英国紳士のような皮肉めいたセリフは減らした方が良いのではないかと思います。
本作品の作者の方は、英米法や国家機構のあり方といった分野ついて高い見識をお持ちの方だと思われます。だからこそ、その見識を今後も存分に活用し、素晴らしい作品を書き続けていってほしいと思います。全世界の王党派に神の御加護を!
丁寧に作り込まれたSF世界観と作者の政治への深い造詣とが調和した作品。
ストーリーとしては人類が宇宙に定住した23世紀の未来を舞台に、日本の宇宙戦艦(作中では航宙護衛艦)が武力衝突に巻き込まれる話です。
特に後編の戦闘シーンで顕著ですが科学技術が相応に進歩し、未来感を演出する一方で、作中には(紆余曲折を経つつも)日本があり、イギリスが登場するように、政治面では今私たちのいる現在との連続性が高いものとなっています。
政治的な連続性の強さは例えば23世紀の宇宙であっても依然日本は自衛隊を有し、艦種名に政治的な配慮をするという点にも現れており、この他にも作者の政治への深い造詣がSF的世界観をまとって展開されることで緻密な世界観を作っています。
また一見すると未来と現在が混在したこの世界はアンバランスな印象がありますが、このギャップを登場人物たちの皮肉的なトーンで整えた点も本作の魅力でしょう。
やや難を言えば、過去に渡って作り込まれた設定が作中散りばめられたため、読み進める際に時系列が定常しない部分もありますが、前述の魅力はそれを上回るものと考えます。
ハードな上に政治SFというニッチなジャンルが災いしてか、反響に乏しいようですが、個人的には作者の今後に期待したい。
この作品の素敵なところは、非常に緻密な設定と考察が加えられているところである。
大英帝国の高官役職などは、保守的な国民性を投影してほとんど変わらずに残っているのが極めて現実的である。
また、日本人の有するある一定の自分勝手さについても皮肉的に表現しており、悲しくも、また冷笑を交えて読むことができた。
緻密な設定に裏付けされた作品であり、非常に興味深い内容で、続きについて妄想を膨らませてしまう時点で、この作品は私のお気に入りなのであろう。
また、別の作品があれば期待したい。
ただ、設定の説明が丁寧すぎて少々冗長にとられかねないのが非常に残念だ。作者の優しさで設定の解説があるのは非常に良いと思うし、無くして欲しくはない。これが伸びにくい理由ではないだろうか?
しかし、辛抱強く読めば、その先には緻密な設定に裏付けされた素晴らしい政治系SF作品が待っているのだ。
この作者には強く期待したい。