第16話 ○ジだよ、全員集合!

 つかさなやんでいた。幽霊ゆうれいアパートのうわさこわくて、名前なまえめかねていた。しかし、住人じゅうにんえたし、そろそろアパートの名前なまえめたほうがいい。マツじいたちはコーポ形式けいしき住居じゅうきょだったが、今はアパート形式けいしきなのでつかさきにつけろという。かといって、西屋にしや苗字みょうじきではない。つかさそうやアパートつかさというのもオシャレではない。住人じゅうにんたちにいても

「いまさら、どうでもいいよ。」

 というだけだ。つかさゆめかなえる場所ばしょということで、ドリームそうもいいけどれい連想れんそうさせるものはけたい。

 あまりえない翻訳ほんやく仕事しごとつづけているなか、ジュゲムはビザの関係かんけい一時帰国いちじきこくした。そんなある夕方ゆうがた一人ひとり中年ちゅうねん男性だんせいがアパートをたずねてきた。

「いらっしゃいませ。1部屋へやだけいてますよ。」

 つかさは、いつものどお満面まんめん営業えいぎょうスマイルで出迎でむかえた。

「いらっしゃいましたね。」

 ん?おかしなことをう。また外国人がいこくじんか?

「ほう、えるのかね。」

 いつのにかマツじいが0号室ごうしつまえっている。

「あなたも、マツさんがえるんですか?」

 つかさは、なんだかうれしくなった。同時どうじに、幽霊ゆうれいがいたらりてくれないかもしれないという不安ふあんもあった。

「これは、自己紹介じこしょうかいおくれました。」

 自己紹介じこしょうかいという言葉ことばいて、つかさこころは15年前ねんまえにワープした。

「あのときの・・・バカ!」


 つかさ健次けんじ名前なまえらなかった。

祐二ゆうじからいてた。」

 健次けんじわらっていた。祐二ゆうじつかさ再会さいかいしたあとに、彼女かのじょ日本にほんかえってきたことを健次けんじおしえた。霊視れいしメガネの開発かいはつ健次けんじ協力きょうりょくしていたため、かれらはねん数回すうかいだがメールで近況じょうきょうつたっていた。

 よるになって、祐二ゆうじもやってきた。健次けんじ祐二ゆうじは、やすみで部屋へやにいた零児れいじとすっかりれいはなしがっている。

「ここなら、れいについてのほんけそうだな。」

 健次けんじは、れない自称作家じしょうさっかだった。霊界れいかいネタにっていたところだった。ペンネーム、ケンケンタ。サインのときらくだということでカタカナにした。ペンネームはおぼえやすさが大事だいじだ。サインかいで『ケンケンパ』をつかみねたにめていた。

「いつ、そのねた使つかうんだよ。」

 祐二ゆうじがつっこむ。

めた、おれ、ここにむ!」

 健次けんじぱらいながらさけんだ。

らない大家おおや家賃払やちんはらうくらいなら、つかさやくてたいしな。祐二ゆうじ、おまえはどうする?」

 健次けんじいにチラッとつかさをみると

研究室けんきゅうしつなら。」

 と、小声こごえこたえる。

 健次けんじが2号室ごうしつむことになった。祐二ゆうじは0号室ごうしつれい研究けんきゅうをすることにまった。


 つかさとミナミは祐二ゆうじってきた食材しょくざい料理りょうりつくっていた。こんな、大人数おおにんずうごすのは何年なんねんぶりだろう。祖父そふいえでたまの休日きゅうじつにやってくる両親りょうしんごしたおさないときの記憶きおくがよみがえる。

 マツじい零児れいじ祐二ゆうじ健次けんじ、ミナミ、つかさの6にんはマツじい部屋へや夜中よなかまでさわぎつづけた。

「これで、6室埋しつうまったな。達者たっしゃでな。」

 マツじいはいままでにないほどの笑顔えがおだった。

「え?いま、なんて?」

 つかさはびっくりしてマツじいのほうをいた。マツじいえていた。

成仏じょうぶつした?」


 どうやら、マツにとっての未練みれん自分じぶんたちのてたこのいえ満室まんしつにすることだったらしい。

 れいがいなくなった。

意味いみなくなった。」

 その、ミナミと零児れいじ部屋へやった。祐二ゆうじ健次けんじ契約けいやくりやめた。つかさのアパートからひと気配けはいえた。れいすらいない。天国てんごくから地獄じごくとはこのことか。

「また、1からやりなおし?」

 そうつぶやいて部屋へや呆然ぼうぜんとしていると、

「タダイマ、ダヨ。」

 ジュゲムのおかしな日本語にほんごがアパートないひびわたった。

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夢の家賃生活ー霊の住む部屋ー 明日香狂香 @asukakyouka

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