第15話 こんどは外国人

 数日後すうじつご不動産屋ふどうさんやから、すぐしいと連絡れんらくがあった。

「こちらの、外国がいこくのかたが入居希望にゅうきょきぼうされているんですが、地図ちずがわからないんでこまってたんです。」

 細身ほそみたかわか黒人こくじんだ。2メートルあるだろうか。大柄おおがらつかさでも見上みあげるほどである。

「ボロイヘヤ、サガシマス。」

 やす部屋へやといいたいのだろう。片言かたこと日本語にほんごはなかれは、両親りょうしんがアフリカのマサイ族出身ぞくしゅっしんで、マサイ片言かたこと日本語にほんごしかはなせないそうだ。

「とりあえず、案内あんないしますので、ついてきてください。」

 つかさ道々みちみち詳細しょうさいいた。

「ジュゲム、イイマスデス。」

 わった名前なまえだ。そういえば落語らくごにそんな名前なまえはなしがあった。

「チチ、ラクゴシャ、デシタ。」

 落伍者らくごしゃ?よくよくくと、父親ちちおや日本文化にほんぶんか勉強べんきょうするために、アフリカから落語らくご勉強べんきょうをしにていたらしい。父親ちちおやから日本にほんのことをいてらしてみたくなったそうだ。

「オトウト、ゴコウ。スエッコハ、フタコブデ、ヤブラコウジ、ブラコウジ。スグ、パイポ、デマス。」

 おとうとがゴコウ、すえ双子ふたごで、ヤブラコウジ、ブラコウジ、まもなくパイポがまれるってこと?もしかしてコンプリートするなの?マサイぞく一夫多妻いっぷたさいだからできなくもないか。

「チチ、オカラ、エイゴ、オツウジナイ、イワレタ。ニホンゴ、ナラノ、ダイブツ。」

 父親ちちおやから英語えいごつうじないとわれ、日本語にほんごならったから大丈夫だいじょうぶってことなのね。


きましたよ。家賃やちんは1かいが5万円まんえん、2かいが4万円まんえん。」

「ボロイホウ。」

 きつりながらも、つかさはジュゲムを4号室ごうしつ案内あんないした。

「2かいはこの部屋へやだけいてます。」

「ダイショウベン。」

「トイレとシャワーがついてます。」

「ダイショウベン。」

 え!ああ、大丈夫だいじょうぶってことね。つかさは、またへんなのがたとおもったが、大事だいじなおきゃくだ。

「ワタシ、タマゴ、スメマス。」

 にわとりでもうのか?

ものは、ほかかた迷惑めいわくなるので、かないものにしてください。」

「タマゴ・・・タナコ、デシタ。」

 おや落語らくご影響えいきょうなのか、与太郎よたろうのようなまわしだ。

 ジュゲムは4号室ごうしつむことになった。


 翌朝よくあさつかさはトーントーンという天井てんじょうひびおとめた。おとのする4号室ごうしつまえき、こえをかけた。

「ジュゲムさん、どうかしましたか?」

 部屋へやなかから

「イマ、パンツヌイデマス。」

 というこたえがかえってきた。着替きがえているということか。着替きがえるのにジャンプする?

 しばらくして、今度こんどはドンドンというなにかをとすようなおとが2かいからする。これにはとなり部屋へや住人じゅうにんたちもあわてて廊下ろうかしてきた。

「ジュゲムさん、大丈夫だいじょうぶですか?」

 つかさいに

「イマ、パンツクッテマス。」

 というこえ部屋へやなかからした。

「そんなものべちゃだめですよ!」

 びっくりした零児れいじとびらける。まえ台所だいどころには、しろ割烹着かっぽうぎ一枚いちまいおおきな黒人こくじん鏡餅かがみもちのようなしろかたまりってっていた。裸割烹着はだかかっぽうぎ

「ミナサン、オハヨウゴザリマス。スグ、パン、デキマス。」

 衣料品店いりょうひんてんで、はじめて割烹着かっぽうぎ料理りょうり作業着さぎょうぎ説明せつめいされたらしい。

人騒ひとさわがせなの。」

 ミナミが自分じぶん部屋へやかえった。零児れいじはジュゲムにふくせた。

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