第14話 類は友を呼ぶ

 長髪ちょうはつうしろでしばり、無精ぶしょうひげの中肉中背ちゅうにくちゅうぜい、Tシャツにジャージ姿すがた、パワーストーンの腕輪うでわに、なぞいしのネックレス。普段ふだん格好かっこうるからにあやしい零児れいじつかさは、体育教師たいいくきょうし父親ちちおやがいつもジャージをていたし、レゲイっぽいやつも留学先りゅうがくさきにはいたので、まったくにならなかったが、近所きんじょでは益々幽霊ますますゆうれういアパートとのうわさひろまっていった。


いたい!」

 1号室ごうしつうつったつかさは、ちょくちょく台所だいどころとリビングの境目さかいめにある鴨居かもいあたまをぶつけた。1号室ごうしつだけは、そこで仕切しきりができるように、鴨居かもいがっているのだ。

「2号室ごうしつにすればよかった。」

 後悔こうかいしたが、またすのは御免ごめんだ。


「おケガですか?」

 不動産屋ふどうさんや状況じょうきょうくために玄関げんかんようとしたつかさは、にこにこしながらはなしかけてきた零児れいじにムッとした。

「そんなにおかしいですか?」

 きょとんとする零児れいじのこしてった。


「『おでかけですか?』のなににさわっったのかな?」

 零児れいじくびをかしげながら0号室ごうしつへとかった。マツは昼間ひるまかけてしまうが、それ以外いがい部屋へやにいることがおおい。零児れいじは、時給じきゅうよるのコンビニでバイトをし、午前中ごぜんちゅう午後ごごはマツのところにいる。なんとかはなしができないかとこころみるも、波長はちょうがあわないのかマツから零児れいじがあまりよくえていないらしい。


今日きょう希望者きぼうしゃ0だった。」

 れいうわさきつけて、たまにひやかしにくる人間にんげんはいるのだが、むとなるとはなしべつだ。つかさいえかえるると、マツが出迎でむかえてくれた。

「おきゃくさんじゃぞ。」

 といって、0号室ごうしつ指差ゆびさした。マツなりに使つかって部屋へやたのだろうか?いそいで、0号室ごうしつくと零児れいじきゃく相手あいてをしていた。

「おたせしました。」

 つかさ部屋へやぐちからこえをかける。

「キャア、たー!」

 まただ。つかさなお

「オーナーの西屋司にしやつかさです。」

 と、おびえるメガネをかけたわか女性じょせいにいった。


「すみません。うわさのおけかとおもって。」

 素直すなおだが失礼しつれいひとだ。しかし、つかさ平静へいせいよそお営業えいぎょうスマイルをやさない。

入居希望にゅうきょきぼうだそうです。」

 零児れいじ女性じょせいわってこたえる。

「わたし、とってもこわがりで。でも、ここにいたら克服こくふくできるかなって。」

 また、わけのわからないひとたと、つかさははガッカリした。

「マツさんました。本当ほんとう幽霊ゆうれいがいるってわかったら、安心あんしんしたんです。」

 零児れいじ解説かいせつによると、女性じょせいはいつもれいにとりつかれてるんじゃないかとおびえて、よるもろくにねむれないそうだ。れいがいるかいないかはっきりさせたいと、ここへようだ。零児れいじ案内あんないでマツをて、このメガネがあれば安心あんしんできるとかんがえたのだろう。

「それでしたら、わざわざまなくても。」

 つかさは、せっかくの入居希望者にゅうきょきぼうしゃなのにとおもいながらも、ことわることにした。

「いえ、幽霊ゆうれいれるためです。」

 みょう理由りゆうだが、彼女かのじょ熱意ねついつかさはしぶしぶ契約内容けいやくないよう説明せつめいした。小南優子こみなみゆうこ。OL一人暮ひとりぐらしなので1かい物騒ぶっそうだからと、2かいの5号室ごうしつくことにした。つかさ部屋へや案内あんないしながら

わたし一人ひとりですが1かいでも大丈夫だいじょうぶですよ。」

 と2号室ごうしつすすめた。が、150センチほどの小柄こがら華奢きゃしゃ彼女かのじょは、つかさ全身ぜんしんながめて

たしかに、大家おおやさんなら大丈夫だいじょうぶでしょうけど、わたし無理むり。」

 とおびえたような口調くちょうこたえた。どういう意味いみだ!

「わたしのことはつかさんでください。」

 アメリカでそだったつかさは、名前なまえばれるほうがれていた。それにわかれた父親ちちおやせいより、祖父そふ自分じぶんのためにつけてくれた名前なまえきだった。

「わたしは、職場しょくばではミナミちゃんとばれています。」

 この、かわいこぶりっこが。しかし、相手あいて大事だいじなおきゃく。ここではらてるわけにはいかない。

「では、ミナミさんとおびしますね。」

「ぼくは、レイジでいいよ。」

 一緒いっしょにくっついてきた零児れいじってはいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る