お題:『銀髪』『ゴスロリ』『卵』

 月が冴え渡る、静かな夜のこと。


 僕は、彼女に出逢った。


 月光を編んでつむいだような銀髪が、一陣の風にふかれて舞い上がる。腰まで届く長い髪が、きらきらと光の粒子を散らしていくのを唖然としながら見つめていた。


 卵型の、僕の手におさまってしまいそうなほどに小さい顔。水晶の肌は、太陽をまるで知らないようだ。それでいて病的な白さではなく、海の底で眠る真珠貝のようにいろづいている。


 彼女は重厚な漆黒のドレスにその華奢な身を包んでいた。レースのあしらわれたひらひらとしたブラウス。腰の辺りに大きなリボンのついているスカートの裾は花弁のようにふんわりと広がっている。いわゆる、典型的なゴスロリ系の格好というやつだ。その服装はあまりにも現実離れした美しさにぴたりと調和していて、幻想的な一枚の絵のようだった。


 その瑪瑙の瞳と視線が交差した瞬間、僕のそれまでの平凡で穏やかな日々は、終わりを告げた。

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三題噺、時々、そのほか 久里 @mikanmomo1123

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