中学生の頃の記憶は、正直言って、あまりありません。
そう思っていました。でも、この作品を読んでいると、思い出さないように蓋をしていただけかもしれないと気づきました。
小学生は、まだ、こども。
高校生は、ほとんど、おとな。
じゃあ、中学生は?
――初めて着た制服は分厚い生地がずっしりと重かった。上の学年のひとたちを「先輩」と呼ぶようになった。長い髪の毛は結ばなくてはならなくなった。好きな人の話で盛り上がった。性的な話を意識するようになった――
思い出は存在していました。あまりにまっすぐで澄み渡りすぎて、思い出すのが辛い、そんな思い出ばかりでした。
中学生という過渡期、理解の追い付かないからだの変化、定まらないからこそ振り子のように揺れ動く心。手に取ろうとするとあわあわと消えてしまいそうな思いを鮮やかに結晶させた作品です。
「どうして、あなたはそうなの?」って、言われたことを思い出す。
どうしてできないの?どうしてそんなことするの?おかしいでしょ?違うでしょ?
どうして普通じゃないの?
男、女。大人、こども。先輩、後輩。
男は女を、女は男を、愛する。
枠組みに満ちた、私たちの世界。
この世界を理解するための、生きていくための術なのだろうけれど。
普通。
それは時に、束縛であり、呪縛。
キャラクターのひとりひとりが、鮮やかに目の前に現れる。
作者から押し付けられた「キャラ」としてでなく、ひとりずつから自然に滲み出る色。
その美しさ。切なさ。
どうか、自由に。
そのままに。
私はこの物語を形容する言葉をもたない。
私が受けとった物語と、貴方が受けとる物語は、違うかもしれない。
貴方自身で確かめてほしい。読み終えた時に、目の前に広がる世界を。
貴方が紡ぐ物語を。
わぁ…… 初めて『れびゅー』なんてしてしまいます。
書きたいって欲がでちゃったので、慣れないことをしてみます。
分かりやすいって、力ですよね。 名前があるって、強い。
世界にふわふわと漂っているものを、こんな形だよって切り離して、私たちは何かしらを理解しようとする。
だってそうしないと、漂っているものは膨大すぎて、小さな私たちには全容が見えなくて、お互いに意思疎通がとれない。
自分自身だって、名前がないとふわふわに漂うだけで、名前を持った人たちの中から消えてしまいそうになる。
意味不明な感想で、駄目ですね。 ちゃんと、分かりやすい紹介も書きますね。
物語は、ともすれば、ごくありふれた学生たちの青春群像。
でもその世界は、薄玻璃に閉じ込められたような、彼らの小さくて形の定まらない心……悩みって、簡単に、勝手に切り取っていいのかな。
そんな、『悩み』に満ちている。
物語は、彼らの想いを一枚の絵に起こすように色を重ねられていく。
ああ、ネタバレしたくないから、上手くかけないな……
うらやましいなって、思いました。
この物語の登場人物たちは、彼らの中に秘めている形ないものを、なんというか……『誰かが今まで大事にしてきた宝物箱』の中に、そっと貯めておいたような、他愛ないガラクタみたいな、そんな言葉で語ってもらっているような気がしました。
昔、偉い誰かが形にしたような、みんなが『いい!』って目標にするものじゃなくって。
海辺で拾ったガラスとか、何となくシャッタ―を押した写真とか、友達が作ってくれた創作物とか。
誰かが。 誰にも知られず、一人にんまりしながら、これはいいぞ!って大切に貯めこんできた宝箱に詰められたような、言葉たち。
そんな大切にされた表現で語られる彼らを、とってもうらやましいって、思いました。
……すみません、なんか長かった……ですよね?
もしご迷惑でしたら、消しに来ますね。汗 (ご連絡下さい)
あのとき自分はどんな風に思って、どのように世界を眺めていたんだろうか?
そんなことを考えます。
小さな頃から住んでいる町で、夜、帰り道、同じ公園、同じ店。でも微妙に違う。変わってしまったものもたくさんある。
あの頃の自分はどんなふうに夜を歩いていたかな?
この作品には、うんと若く、若いことがまるで永遠にあるかのような傲慢さと幼さがあります。
そして読者に語りかけてくる。語り口は、それぞれ誠実。
どういつもこいつも好きを持て余している。
中学生の恋は危うい。幼さで隠した、本当の心。性を持て余している居心地の悪さ。
この作品を読むことで、一瞬あの頃の匂いを嗅いだ気がします。
どう表現したらいいだろう。
作品が完結したとき、おのずと立ち上ってくるはずだと期待しています。