第6話 死神、鎌野秀一〜後編〜
ここはとある刑務所。罪を犯した者達がここに収監されている。
秀一は建物の屋根に降り立った。
――この下、か。
死神に憑依された秀一は、魔界の者達が持つ青紫の闇魔法を使うことができる。その力を使い、魔法陣を展開。天井をすり抜けた。
『夜分遅く失礼します……と』
今回の標的はある男性だが、この場に長くいたためか、虚ろな目でこちらを見つめている。頭の中では分かっていたのだが、暗さと相まって不気味に思えた。
『死神です。貴方の人生は、まもなく終わりを迎えます』
それを聞いた男性は、
「……ようやくか」
そう呟いた。
『だいぶお疲れのようですね』
「……無期懲役を言い渡されて、もう二十年になる。どうだ、外はなにか変わったか?」
『強いて言うならセキュリティが強化されたことですね。いろんな場所でテロが続いてますから』
最近の出来事を細かく説明する死神。男性はただ黙って聞く。
ある程度話終えたところで、今度は男性から語りだした。
「俺は殺人の容疑で逮捕され、ここに入れられた。殺せば名前が上がり、有名になれると思ったんだ」
『……そういう目的で罪を犯す人は、今ではたくさんいます。あなたが先駆者だと言っても良いかもしれませんね。しかし、有名になる方法は他にもあったはず。あなたはそれを間違えたのですよ』
「それは二十年目にしてようやく分かったさ。今思えばバカだよ。さ、早くやってくれ」
その言葉を合図に、死神は左手を突き出し、魔法陣を展開。男性の頭に置く。彼の頭から青白く丸いものが顔を出し、宙に浮いた。
男性がばたりと倒れる。死神は自らの頭上にもうひとつ魔法陣を展開し、青白いものをその中に入れる。
『人間はなぜ罪を犯すのだろうか。謎は深まるばかりだな』
死神は、魂を手にそう呟くのであった。
平成の騎士団〜番外編〜 青原 樹 @803388
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