第5話 死神、鎌野秀一〜前編〜
青紫の髪と目をもつ少年、
ある日の夜。七階にある自分の部屋の窓を開けた秀一。
――よし、行くか。
窓から飛び降り、真夜中の街へと繰り出す。
死神の仕事は、魂を集め、転生を手助けすることである。転生できずに留まる魂を回収することもあれば、死の瞬間に立ち会い、魂を誘導することもある。
今回は後者だ。
相手は70代後半の女性。ガンを患っており、もう長くなかったのだという。
『はじめまして。僕は死神です』
「おやおや、ずいぶん可愛らしい死神さんだね」
『どうも。さて、大変お気の毒ではございますが、貴女はつい先ほど、お亡くなりになりました』
ゆっくりとした口調で話しかける。刺激を与えないためだ。
「……あら、死んじまったの?」
『ええ。僕が見えていることが、その証拠です』
「そう……」
『何か心残りがあるのですか?』
「いえ、もう何もないわ」
女性はそう言うが、視線はどこか遠くを見つめていた。
「……でも強いて言うなら、あの人とまた会えたらなぁと思うんだけど」
秀一は「データブック」から、彼女が会いたがっている人が誰かを知っている。その人は数年前に亡くなっていたのだそうだ。
『……お気持ちはよくわかりますが、僕は夢を実現させるマジシャンではありません。ですが、来世でその人と共に歩めることを願うことはできます。さぁ行きましょう』
死神は女性の手を取り、彼女を光で包ませる。彼女の身体は魂に変化し、死神の手のひらの上で浮遊する。
『良き未来があらんことを……』
青紫の魔法陣を展開し、魂を入れる。
死神の次の目的地は、なんと刑務所。
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