クソリプしかしないPTの勇者なんだけど魔王様が不憫でならない

はち

優しい僕に祝福を!

 僕は勇者。今、王様に呼ばれてるんだ。

 実はね。僕は遠い昔に魔王を倒した事で有名になったんだ。今回、僕が王様に呼びつけられたのは、もう一度魔王を倒して欲しいっていうお願いらしい。

 そりゃぁ、僕の上司である王様に頼まれたら断れないもん。

 ぶっちゃけ、僕、借金抱えて大変なんだよ。自分で言うのもなんだけど、僕は少し人とは違うんだ。そのおかげで今すごい大変な目にあってるんだよね。

 王様が魔王を倒したら、お金をくれるって言うから、仕方なく僕はもう一度旅に出た。

 僕の旅の手伝いをしてくれるのは、魔法使いのジョージ ヒーラーのエミコ シーフのエリカの3名。王様からの推薦だったんだ。

 まぁ、旅をしてわかったんだけどね。こいつら、本当にイタイ奴らばっかり。ジョージは、僕の冗談を「面白さ99。9mm」って言ったらさ。


「勇者様。面白さってミリ単位で表す事はできませんよ。ミリは長さの単位です。面白さって目に見えないものじゃないですか。目に見えない事を測るのは不可能ですよ。よって、勇者様のその表現は不適格です。訂正してください」


 って言い返すんだよ。本当にクソ。だから30過ぎても結婚できねーんだよ。

 シーフのエリカは、わけわかんないけど、


「俺に用か? 勇者さんよぉ。俺は優しいゼ。少し闇に染まってる部分はあるが、お前を食ったり……。うっ。左手の甲に埋め込んだ呪いが疼く」


 とか言って抑えるのって右手なんだよなぁ。それさ、エリカ。お前は35歳だろ。シーフだからかもしれないが、いい加減にビリビリに破れたジーンズと、指ぬきグローブ。眼帯に安全ピンって言う衣装どうにかならない? 見てて痛々しい。泣けてくるんだよ。

 あ、ヒーラーのエミコはすげぇいいよ。可愛いし。ツインテールで、リボンが付いててさ。レースが付いたミニスカートにニーハイ。本当に可愛い。俺が怪我すると、


「はわわ。勇者様大丈夫ですか? エミィがすぐに治してあげますよ!」


 って言ってすぐに駆け寄ってくるんだ。語尾に「ムゥ」とか「だにゃ」とか付けるからもうたまらん。エリカはすげぇ睨むけど、若い娘に嫉妬すんなよ。見苦しい。

 ま、俺のストライクゾーンじゃないけど、エミコの俺に対する愛には気づいてる。童貞のジョージはエミコの優しさを勘違いして、エミコの尻追っかけているけどさ。お前、エミコの迷惑だっつーの。空気読めよ。本当に。


 そんな事があったけど、俺たちは無事に魔王が住む城にやってきた。

 魔王を守る悪魔を勇者の剣で払いのけ、この城の一番奥。魔王の座までやってきた。この魔王。距離はあるけれども、威圧感がすごい。椅子に座っているけれど、俺たちへの殺意がビンビンしている。これは、すげぇ好敵手だぜ。


「よく来たな勇者よ。 お前たちの登場を今か今かと待っておったわ」

「魔王よ。今日こそ年貢の納め時だ。国民の安心と平和の為、お前には死んでもらう」


 俺の口上に魔王は大笑いをしやがった。笑ったまま、立ち上がり、俺たちのところまで軽々しくジャンプをして距離を縮める。

 やばい。この身のこなし。かなりヤレる奴だ。


「フフフ。勇者よ。死ぬのはお前たちだ。私が、この腕で八つ裂きにしてくれるわ!」


 そうすると、魔王の手から鋭い爪が現れた。俺は勇者の剣を構え、いざ、魔王の元へーーー


「魔王。それはおかしい」


 口を挟んで来たのは魔法使いのジョージだ。なんだよ。いいところなのに。空気読めよ。


「あなた、今、【この腕で八つ裂きにしてくれる】と言いましたよね。腕とは人の肩から手までの部分をさします。指は含まれません。であれば、腕の形状は棒に近いと言えます。棒で可能なことと言えば、叩いたり、砕いたり。打撃攻撃が主でしょう。八つ裂きとは、2つ以上の力点から一つのものが二つに分離する事です。打撃の力点は持ち手の1点と考えると、この腕 と八つ裂き は両立しないのではないでしょうか?」


 うるせぇよ。ジョージ


「拡大解釈をし、腕を指ないし爪まで含めるとしましょう。あなたの爪はかなり細い。ものを裂くと言うより、切り裂かれた肉を支えるぐらいの強度しか耐えられません。八つ裂きにすると言うより八つ裂きの補助をする。のが正しいのではないでしょうか。なので、セリフを言い直すとすれば、【私がこの鋭い爪を用いながらあなた達を殺害する】がよろしいかと思います」


 黙れよ。ジョージ。そう言う事まじいらねぇから。ほらみろ。魔王の体が震え出したじゃねぇか。怒ってるぜ。あいつ。


「やめろよ。ジョージ。お前、魔王と勇者の戦いをなんだと思ってる」


 そう言ったのは予想外だが、エリカだったんだ。エリカはジョージを引き止め、首を振り、男の戦いに水を刺すな。と言ってくれた。ヤベェよ。ただの嫉妬に狂う奴かと思ったけど、エリカ、すげぇまともじゃねぇか。


「俺はな、魔王の闇にゾクゾクするんだ。あいつの闇が俺の持つ闇と共鳴している。俺は、気を緩めれば俺の中に眠る闇が暴走する。いつ、俺の身体を食い破るかわからない。緊張を持って戦わないといけないのに、お前は、水を刺すな」


 オメェもだよ!

 なんなんだよ。お前の中の闇って。お前、悪魔がいるとかなんとか言ってたのは左の甲だろ。ってか、今日は額なのかよ。


「くっ。頭がガンガンするぜ」


 眉間に皺寄せてなぁ。お前が痛いんだよ。お前をみる俺の心が痛いんだよ。わかってくれよ。もう更年期かよ。


「勇者よ」


 魔王が俺に声をかける


「悪いな魔王。俺とお前の戦いに水をさして」

「……。俺、あの人の言う闇の力とか無いんですけど」


 魔王。わかった。とりあえず、お前がそれ以上言うと、収集がつかないから本当にそれだけはやめてくれ。エリカがヒステリーを起こすとな、面倒臭いんだよ。鼻息をブヒブヒ鳴らしてな。涙流して何を言っても「イヤ」しか言わない。本当に面倒臭い。ほっとけば「私なんていらない子なのね!」とか言い出すんだよ。てめぇ、もう「子」って年じゃねぇだろ。考えろよ。


「それでも、魔王。お前は、魔王だ。人々に苦しみを与えている。それだけで十分に悪だ」

「フフフ。勇者よ。そうだ。俺は俺と言う存在がある事で人々に恐怖を与えている。それが魔王だ。勇者が希望の光なら、俺は人々の恐怖。それで良いでは無いか」


 魔王は大きく両手を広げ、俺たちを威圧する。くそっ。どこから攻めればいいのか。このまま突進すれば、魔王の巨体に跳ね返される。背後に回ろうにも、あの身のこなし。そう安安とは行かせてくれない。


「勇者よ、覚悟ーーー」


 俺が考えるよりも先に魔王は俺に突進してきた。あの鋭い爪を束ねて。俺は、自分の身を守るべく、剣を盾にした。


「お兄ちゃん。もうやめて!」


 背後から聞きなれない声がした。その声が届くと、魔王は俺たちに対する攻撃をやめた。振り返ると、それはまぁ。120センチ前後の可愛い女の子がいるではありませんか。ぱっちりお目めに内股に揃えられた足。メガネもしている。で、お兄ちゃんということは。


「悪魔っ娘よ。お前は引っ込んでいろ。これは俺と勇者の戦い。お前は口を出すな」

「違うよ! お兄ちゃん。私知ってるの。 お兄ちゃん。私にコンタクトレンズを買わせたいから、お金を溜めるために、わざと魔王をやっているって。魔王をやって人々からお金をもらえればそれでいいって思ってるけど、それじゃ違うの。私は、お兄ちゃんからそうしてまでコンタクトレンズを買ってもらいたいとは思わない。私は、私のままでいいの。お兄ちゃんと、昔みたいに仲良く田舎で生活できればそれでいいの。だからね。お兄ちゃん。もう無理をしないで」


 そう言うと、悪魔っ娘。は魔王の元へ駆け寄った。

 俺は、魔王が許せなかった。こんな可愛い妹を泣かせる兄がいてたまるものか。兄は、妹を守るんだ。兄は絶えず妹の暴力に耐え、妹の横柄さに耐える。忍び難きを忍び耐え難きを耐える。そして、「理想の男性はお兄ちゃん」と言う結末を導かねばならない。なのに、魔王はこの義務を放棄した。

 それが許せない。実に許せない。

 あと、兄として妹にコンタクトレンズを買わせるな。メガネを買え。メガネを。今時の流行りのメガネではなくて、丸くて黒縁メガネ。度が進んでいて「牛乳瓶みたいだよぉ」とコンプレックスを持ち悩み姿に何故理解がない。度し難いぞ。魔王。

 魔王は悪魔っ娘。と抱き合い、「しかし。しかし」と言う。

 そこに颯爽と現れたのは俺の天使。エミコだ。


「魔王。あなたの苦しみ。私と勇者が受け止めました。妹さんの為に苦労されたのですね。でも、まだ間に合います。貴方はまだ何も傷つけていないじゃないですか」


 そう言うと、エミコを魔王の手を握った。


「魔王。考え直しなさい。今ならまだ間に合います」


 エミコは、俺の顔を見て、「ねっ」と声をかける。もう。ここまで来たら認めないわけには行かない。エミコの笑顔マジでプライスレス。


「魔王。今日のところは引きさがろう。だが、お前が再び我が王。我が国民を脅かすような事があれば、俺は勇者として容赦はしない。覚えておけよ」


 俺は、そう言うと、剣を鞘に納め、マントを翻して魔王の城を去った。後ろでジョージとエリカが何か言っていたが、特に気にしない。最高に俺は心地が良い。エミコの笑顔と兄弟愛。あんなものを見せつけて攻撃することはヤボってものだ。



 こうして、俺たちの冒険は終わった   はずだった。


「勇者よ! これはどう言うことか!」


 しばらくして、俺は王宮に呼ばれた。そこにいたのは魔王とエミコ。何故か知らないけど、魔王はもぞもぞしている。王様は俺に紙を1枚渡して来た。

 その紙に映し出されていたのは、


 魔王が尻を丸出しにし、尻穴にカラーコーンをぶち込まれている写真。その背後にいるのはボンテージ姿の    エミコだった。


「ファあああああああああああああああああああああ?」


 素っ頓狂な声をあげて、俺は魔王とエミコを見返す。


「ま、まさかエミコさんが行きつけのオッパブの従業員さんだったとは知りませんでした」

 え、お、おっパブ?

 エミコは顔を赤くしながら、魔王の脇腹を何度か突いた。


「もぉ。だって、魔王様。すごくかっこいいのに、尻の穴にカラーコーンを入れられるのがたまらないとか言うから。魔王様のわがままだったら、エミィ、頑張っちゃうもん」


 俺の中でエミコの全てがガラガラと崩れていく。エミコのおっぱい、俺は見てなくて魔王は見てるとか本当に無理。それに、エミコの手首にあんな切り傷があるとか本当に無理。何もかもが無理。


 やっぱり、12歳前後の女の子で(初潮前が最適)大人びていないメガネっ娘。純情で「お兄ちゃん! だぁい好き」と掛け値なく言ってくれる幼女が最強だと思いました。

 

 俺は王宮を飛び出した。王様からもらった金を握り締め、アンダーグラウンドな大人の社交場に向かって走り出した。

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クソリプしかしないPTの勇者なんだけど魔王様が不憫でならない はち @azukinako

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