#39
初めはただの小説だった。今思えば自分の奥底にあったものを吐き出しただけだったんだろう。
それをどうしてわざわざゲーム……それもアダルトゲームにしたのかと言うと、さして面白い理由でもない。
一つは単純に興味があった。僕だって年頃だからね。
あとは、ちょっとした打算。まさかあんなに注目されるなんて考えてなかったから、誰でも見られる全年齢層より、一部の人の目にしか付かないアダルトゲームならば身バレするとは思っていなかったんだ。
まぁ、まさかあんなに頑張って演技した声だったのに、僕の素の声を聞いて正体を見破る人が現れるとは思わなかった。
アレにはちょっと引くよね。ふふっ、あの時は凄く内心焦ってたんだ。でも、なんだか悪戯したくなって来ちゃった。
ある意味運命の出会いってやつだと思う。
そう、かっこいい主人公との。
結果、僕は今こうして友人達と花火をして遊んでいる。
「輝兄さん、ちゃんと話して下さい!」
「ちょ、姫ちゃん!? 花火をこっち向けて走って来ないで!? うわぁぁぁ」
「寧々を放って花火をした報いを受けろぉぉぉ」
「あ、馬鹿! ネズミ花火をぶん投げぎゃあああ」
かっこいい……時もあるよね!
「おーい、輝夜。これ変な形してるけど、何の花火?」
「へ? あぁ、それはロケット花火って言って」
「ロケット!? かっけー」
「あ、待て! 火を付けるな! 危ないから捨てなさい!」
「マジで!? えいっ」
「えいってこっちに投げるんじゃねぇぇぇ!」
勢いよく逢坂君に向かって飛んで行くロケット花火。
良い子は真似しちゃダメだよ。
あ、コケて当たらなかった。
と、思ったら名古さんに捕まってる。手を差し伸べて……いいなぁ。
「そういう時は向こうへ行って、混ざればいいんですよ。先輩」
「七家さん……別に僕は……」
「まぁ、いいですけどね。私としてはライバルが減るので」
「だ、だから何の……」
「顔真っ赤ですよ」
「んぬぬ」
なんなんだこの子は! 逢坂君と一緒になって僕を引き込もうとしてたクセに。やってる事と言ってることが矛盾しているじゃないか。
「お友達と、それ以上は別の話です」
「む」
「それではいつまでも輪の外から眺めていて下さい」
そう言うと彼女は立ち上がり、輪へと走って行った。
火が欲しいと逢坂君の花火から火を貰って、もう死ぬほど羨ましい。
というか、近くないかい!? あの二人の距離!
よし行くぞ。そもそもこの花火は僕のために用意してくれてだな。
「弥白先輩! そんなとこで座ってるとネズミ花火投げますよ」
「なんでネズミ花火!?」
それは危ないなぁ。
ここの年長者としてちょっと叱らないとダメかな。
「……はぁ。あのねぇ、君たち――」
R-18な彼女はどうやら経験値が足りないようだ 米俵 好 @ti-suri
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