7-4【マジカル☆ロワイアルの終了をお知らせします】

 ☆???


 なにがおこってるんだろぉ


 あれ、わたしはなにをしてるんだろうねぇ


 ……あぁ、そうか


 あの子を守らないとねぇ……?



 ☆バーグラー


 銃声が鳴り響く。何事かと思った瞬間、自分の右頬から血が飛び散る。痛みに耐えれず、そこに手を当てると、血が確かにそこにあった。


 何事かと思うと、そこにはひとりの怪物がこちらを見ていた。彼女は銃を構えて、この世の全ての闇を集めたような目を、こちらに向けていた。


「ガンナー……!!」


 ガンナーはゆらりと体を動かしながら、歩いて来る。ゾンビになったのなら、キャスターの命令なしでは動けないはずなのに。


 いや、動けるからなんというのだ。相手はゾンビ。なんとか倒せることができるはず。


「……力を借りますよ、ランサーさん」


 そう言ってランサーの槍を拾い上げる。それだけで、少しだけだが力が湧いて来るような、そんな気がした。


 思ったよりも軽いそれは、バーグラーでも簡単に操れることができそうだった。ガンナーをにらみながら、一度だけ払う。


 その行動に意味はない。が、無性にしたかったのだ。深く息を吐き、槍を構えて走り出す。


 ガンナーは銃を構える。一発一発。それはバーグラーを狙っているわけじゃないほどの、狙いが甘く。バーグラーはかするだけですんでいた。


 直線距離で、およそ3秒でたどり着けるか。バーグラーはあくまで冷静にそう考えていた。


 最初の一秒は長かった。


 槍が手に馴染み、走り出している彼女はすでに、標的は見えている。だが、邪魔するように彼女は銃を撃ち続ける。


 ほとんど当たらないとしても弾丸の痛みは重く。一瞬でも気を抜けば倒れてしまうだろう。だが、そういうわけにも行かなかった。


 体をずらせば。迂回すれば避けるのなんて簡単だと、それくらいは理解できた。しかし、そんなことする時間すら惜しい。今は、早くあのゾンビを殺すことだけを考えないといけない。


 だから弾丸の雨でも耐えれることができる。いや、正確に言えば耐えないといけない。という方が正しいかもしれない。


 次の一秒はいつの間にかきていた。


 血で目が霞み始めた。汗と同じように拭うなんてこと、そんなことをする気も起きない。なんせ、敵がどこにいるかは分かっているからだ。


 なら目が見えなくても関係はない。ただひたすらに、愚直に、まっすぐと突き進めば、そこにゴールがあるのだから。


 腕を後ろに引き槍の刺突の威力を少しでも高めようとする。チャンスは一度しかないのだからそれを逃す理由は、ない。


 血なんて気にするな。弾丸なんて気にするな。気にするべきは一つだけ。ガンナーの命。それだけだ。


 最後の一秒は短かった。


 ドン!と、大きな音と衝撃。そして、槍がガンナーを貫くのが同時。


 それだけだった。



 ◇◇◇◇◇


 ☆佐藤美海


 あの日の後、彼女は病院に来ていた。理由は簡単。大切な彼の完治を願ったから。だから、それを見に来た。


 病院で受付を済ませ、その病室に行く。遠慮がちにノックすると、そこにいたのは、ベッドの上に座っているあの人だった。


 途端に喜びに包まれる。はやる気持ちを抑えつつ、彼のところまで駆け寄った。彼の手を握ると、少し冷たかったが、ちゃんと握り返してくれた。


 それでよかった。それだけでよかった。彼が生きているだけで、自然に涙が溢れて来る。そんな自分を見た彼は小さな声でつぶやいた。


「なんで泣いてるんだい?」

「だって、だって……!!」


 貴方が元気だから。そう言おうと思ったのに、彼が開けた口から出されたのは。


「殺し合いに勝ったからかい?」

「えっ……は?」


 彼の口から飛び出たのは、信じられない内容だった。彼は美海の手を振り払い、こちらをじっと見つめ始める。


 いつもなら嬉しいその視線も、今日はなぜだか受け入れたくなくて、思わず視線を逸らした。


「君は何人、人を殺したんだ?」

「な、二人だけ……しか、殺して……」

「二人?人を殺しておいて、二人だけと君は言うのか?」


 なんだこれは。彼は一体何を言っているんだ。その時、突然彼の姿が消えたが、それはただ自分が無意識に視線を逸らしていたということに気づく。


 彼の言葉が美海の心に直接侵入して来る。いつもなら、心地いいのに、ここでは嫌悪感しか抱かなかった。


「それに君は、あんなにランサーさんと一緒にいたじゃないか。なんで、僕を蘇生したの?」

「あ、あの人は私を殺そうとした!だ、だから蘇らせたら……」

「本当に?あの人の言葉、忘れてなんて言わせないよ」

「あ、あぁ……い、いや……ちがう。違う!!」

「違わない。君は勝手な思い込みで一人の人間を殺し、さらにその人に謝罪するどころか、もう忘れようとしてたんだ。だから僕を蘇らせた。あの人との関わりをなくすために」

「いや、いやぁ!!」


 耳を塞ぐ。違うと否定することもできず、ただただその言葉を無視するためだけの行動に走った。


 しかし、それは意味をなさず、指の間すらすり抜ける彼の声は、もう、ただのノイズでしかなかった。あんなに愛おしかったのに。あんなに聞きたかったのに。今ではもう、消えて欲しい。そう願ってしまう。


「なんで……」


 声が、聞こえた。その声を聞いたとき、思わず美海は耳から手を離し、そして顔を上げる。そこには、一人の女性がこちらを見下ろしていた。


 目と目が合う。彼女の目は、闇より暗く。見るだけで心が壊れてしまいそうだった。そして、彼女は小さく口を動かした。


「……なんであたいを殺したいんだい」

「あ、あぁ……あぁ……」

「あたいを殺したんだい?」

「あぁああああぁあああぁああぁああああ!!!!」


 少女は泣き叫んだ。壊れて行く。自分の存在が、世界が。音を立てて崩れ落ちて行くことが、今目の前で起きていた。


 ピロリン


 そんな彼女のスマホは、静かにメールの受信を知らせていたのだった。



 ◇◇◇◇◇


【メールが届きました】

【キャスターとバーグラーが戦いました】

【結果、バーグラーは死にキャスターは生き残りました。キャスターには1ポイント。只今の合計は 7 ポイントです】

【残りの魔法少女は 1 名です。頑張ってください】

【おめでとうございます】

【今回の優勝者はキャスターに決まりました】

【おめでとうございます】


 ◇◇◇◇◇


 ☆キャスター


 メールが届いた音が聞こえる。意識がだんだんと遠のいていくのを感じていて、もう倒れてしまいそうだった。


 バーグラーはあれから動いてない。心臓を撃ち抜かれたのだ。生きているわけがない。


 だが、それはガンナーも同じだ。槍で貫かれた彼女は、もう完全に死んでしまったようであり、ピクリとも動かない。


「あ、あう……おえ……いあん……」


 顔から流れ出している血は少しずつだがキャスターの生命を蝕んでいることはわかった。でも、動かなければ血の減りは抑えられるだろう。


 だが、彼女はそうしなかった。血が流れることを厭わずに、彼女はゆっくりと這って移動した。ガンナーの近くまで来た後安心したような顔になる。


 手を伸ばした。冷たかったけど、暖かい。そう思えた。ガンナーの愛情は、わからなかった。だけど、今は幸せだと。愛情があると、なんとなく、そう感じた。


 ガンナーを見上げる。彼女が少しだけ笑ったように見えて、キャスターもそれにつられるように笑顔を見せる。


 そして、彼女はゆっくりと目を閉じた。その後、少しだけ時間を置いてから、スマホが鳴り響いた。しかし、それに応える人物は一人もいなかったのだった。



 ◇◇◇◇◇


【メールが届きました】

【皆さんお疲れ様です】

【マジカル☆ロワイアルの終了をお知らせします】

【また機会があれば、お会いしましょう】

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マジカル☆ロワイアル たぷたぷゴマダレ @aisu_monaka0501

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