ツイッタで小説更新のつぶやきが流れてきてので一気読みさせて頂きました。
ものすごく面白い という感じではないのですが、鍛冶師としての力と幾ばくかの身体能力を神に授かり、その力を使って鍛冶師として精力的に活躍する一方、話を盛り上げるために色々な人たちと冒険したり厄介事を片付けたり…
日々の生活の中の大小様々なイベントをうまく物語にし、鍛冶師の、鍛冶師による、鍛冶師のための正しくスローライフな日々が描けていると思います。
嫁候補(ヒロイン・家族)がどんどん増えますが、すぐに体を重ねてお前達を心から愛している!みたいな露骨なハーレムでもなく、アットホームな仲良し家族といった雰囲気なので読んでいてストレスも少なく日常生産系の小説が苦手でなければ一度は読んでほしいと思える内容です。
最近、歳を感じ始めた私がかっこいいおっさんが出ている小説を探し回っていたのですが……
いました、こんな所に。
強い奴を片っ端から倒してKAKEEEEEEEE!!ではありません。
そこはやはりおっさん、カッコよさに深みがある。心の余裕がある。
そんなおっさんの下に集う美少女、美女達。そら、あんなにかっこよかったら集まりますわ。心がかっけー!
この小説のすごいところは鍛冶のシーンです!
臨場感もさることながら、一つ一つの工程が違う!……いや、作っているものが違うから当たり前なんですが……
その描写が毎回違うんです!だから、飽きさせない!
おそらく私が書いたら「鉄手に入れました→打ちます→完成」「ミスリル手に入れました→打ちます→完成」ってな具合になります。圧倒的な力量差にもはや笑うしかねぇ!!(笑)
一度読んでみたら、あなたも鍛冶屋になりたくなるんじゃないでしょうか?
鍛治、料理、時々戦闘。異世界ファンタジーでありながら、物作りに重きを置き、その過程がストーリーに密接に関わる異色作。
大多数の物語において、物作りは成果物と主人公を結びつけるためのフレーバーでしかありません。例えば鍛冶屋の物語であれば、重要なのは産み出される剣であって、それを生み出す工程ではないのです。
でもこの作品では、鍛治は常に主人公の暮らしの中心であり、世界との接点であり、そして物語の鍵であり続けます。産み出される剣ではなく、それを生み出す鍛治こそが、物語を紡ぐのです。
淀みなく流れるストーリーの中心に、忌避されがちな地味な作業を据える。そんな難しい試みを支えるのは、異世界ファンタジーならではの設定。あくまで物作りを軸としつつも、細かいところを端折ることで、ストーリーのテンポを落とさないバランス感覚はお見事。
絵空事ではなく、しかしリアル過ぎない。絶妙なバランスで描かれる、物作りと冒険の世界を彩るのは、それぞれ魅力的な登場人物たち。次第に賑やかになっていく主人公の周囲もまた、読む者を楽しませてくれるでしょう。
鍛治が繋ぐ、人と人。絶えることのない槌音が紡ぐ物語を、どうぞお楽しみください。