【読切】ま、まさか?!の転生さきがアクションゲーム?!娘のお願いにジャンプする!

酔玉 火種

【読切】

 正月早々、居眠り運転のトラックにひかれるなんて…。なんて!なんて!


 ついてるんだ!


 ワクワクするぜ!知らない天井!


 知らない天井と言っても、病院じゃない!

 まがうことなき、異世界!

 寝てるベットが、ちょーかっちょいい!


 ドアがノックされる。

 こんこん!ガチャ。

 「おとーさん。朝食できたよ~。」


 ま、まさかの子持ち。15、6歳の金髪美少女!こりゃ、俺の嫁も美女に違いない!


 「ははは。おはよう。かーさんが用意してくれたのかな?」

 「何言ってるの!かーさんは、3年前に死んじゃったじゃない!」

 「そ、っそそそ。そうだったな。」

 嫁なし子持ちスタート?何それ?何それ?


 朝食をとりながら、思いつくことを試してみる。

 「ステータスオープン」


 しーん


 「クリエイトウォーター。」


 しーん


 「おとーさん。そういう恥かしいことは、よそでしないでね…。」

 「あ、ああ。魔法とかないよな。」

 「あるわけないでしょ。」

 「ははは。」

 ファンタジー世界じゃなかったら、転生じゃなくて、妄想もうそう語る記憶喪失のおっさんじゃないか!


 朝食をとり終わると、娘に促されシューズを履かされる。

 「ん?なんだこれは?」

 「ジャンプシューズに決まってるじゃない。今晩は、焼肉にするから、お肉をお願いね。」

 「????」


 開けられた玄関の外には、見渡す限りの空。


 「地面がない…。」


 「じめんって何?そんなことより、さっさと行ってよ。いつまでも、いられると家のことができないんだから。」


 「「…。」」

 ぴゅ~。

 足元を風が吹き抜ける。


 「いやいや、どーやって?!ってか、名前すら知らない娘よ。無理だ!」

 「もう!いい年して!駄々っ子のおとーさんなんだから…。ヒナのお願い。お肉よろしくね。ちゅっ。」

 人生初のファーストキスが、娘からの頬へのキス・・・全然OK!これはもう勝ち組でしょ!


 ひゃっほー!!!

 軽く跳ねたつもりが、一気に家の屋根より高くに飛び上がる。


 「いってらっしゃーーーい!」


 家から、数十メートルは離れた空に浮く島に着地する。


 ま、まさか?!まさかのアクションゲーム転生?!


 玄関の扉が締められると家が消える。

 「おい!いろいろ!おい!」


 空に浮く島にポツーンとおっさん。

 次の島にジャンプする?できるわけないだろ!こえぇよ!めちゃくちゃ!こえぇぇぇぇぇぇよ!地面ねぇーんだぞ!


 よくよく見ると、肩のあたりにあるカウンターが減っている。

 「制限時間付きってか…。くそぉ!!!やってやんよ!」


 ズダダダダ!ここ数年、走ったこともない精神に、どこの誰とも知らない体で走り!ジャンプする!


 ひゃっはーーー!

 次の島…。を、大きく超えてジャンプする?!


 「いや!そりゃねーだろ!」

 

 空中ジャンプ!空中方向転換!できましぇーーーーーん。


 ひ、ひゃぁ――――――――。

 ドスン


 「えがったー。えがったよー。先にも島があったーーー。」

 まじ泣き状態だが、カウンターがグングン減っていく。


 次の島へ、ジャンプ!


 とぉーーー!

 スタン


 次の島へ、ジャンプ!


 とぉーーー!

 スタン

 よし!なんとか、感覚はつかめたぞ!たぶん!


 「おや?」

 島の中央に宝箱がある。

 「お?!お肉でゲームクリアーかな?」


 ぱかっ


 ――――――――――――――――

 パンチンググローブ

  1回だけパンチで何でも弾き飛ばせます。

 ――――――――――――――――


 「…。」

 そうだよな。数回跳んだだけで、クリアーしないよな。

 次は、って高?!


 「届かないだろ?!あれ!」


 ちょうどいい位置に小さな雲が浮いている…。


 「雲に向かって、跳べと?!常識的には無理だよね!無理だよね!」

 カウンターがグングン減っていく。


 くそぉ…。


 くそぉ~!!!!

 雲に向かって、ジャンプする!着地する瞬間目をつぶってしまう。

 スタン


 よし?よーーーし!

 雲がだんだん薄くなっていく…。


 くそ!!!ジャンプ!

 スタン


 次の雲へ、次の雲へ、ジャンプるする。


 かなり上空に浮いていた島に着地する。


 島の中央には豪華な宝箱がある。

 今度こそクリアーだろ?


 スタン


 別の島から、エルフの美女が跳んできた。

 「あらぁ。先越されちゃいました?」

 「ははは。そうみたいですね。」

 「あん。あのぉん。何とか~なりません?」

 セクシー!!ちょう枝垂しだれかかられる・・・。むふ。


 ぱかっ


 「フフフ。ごめんなさい。先に開いたもの勝ちよ☆」

 「へ?」


 エルフの美女の後ろに扉が現れ、霜降り肉を片手に持ち、手を振りながら扉の向こうに消えていく。

 扉も消えていく。


 「な、なんだそりゃぁぁ!!!!」

 カウンターがグングン減っていく。


 「…。」

 カウンターがグングン減っていく。


 次の島に向かってジャンプする。

 こなくそぉーーーーーー!!!!


 ―――――

 そして・・・

 ―――――


 「おとーさん…遅い!で、お肉は。」

 なんとか、制限時間内にたどり着き、鶏肉・・とグローブを渡す。

 「肉だし、いいよな?」


 「「…。」」


 ヒナは無言で玄関を開け、グローブをはめる。


 「焼肉って…。言ったでしょーーーー!!!」

 ばちこ~~~~~ん!


 玄関から、綺麗に弾き飛ばされ宙を舞う。

 ヒュ―――ン!

 死ぬ?!死ぬ?!島なかったら死ぬ!


 新たなカウンターが動きだす。

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【読切】ま、まさか?!の転生さきがアクションゲーム?!娘のお願いにジャンプする! 酔玉 火種 @yoidama-hidane

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