対戦

プルルルル…、プルルルル…、プルルル、ガチャ。

『もしもし、こちら株式会社エースペースですが』

「面接って今受けれますか?」

『は、はい?』

「いや、あの、私就職先探していてですね。 そちらの会社に入りたいのですが」

『は、はあ。……いつ頃ですか?』

「そちらの大丈夫な時でいいのですが、明日辺りいいですかね?」

『ちょっと上の方に掛け合わせてみます』


『もしもし、明日の13時頃来ていただければ試験を行いますのでお願いします』

「あ、わかりました。 ありがとうございます。 では、明日伺いますのでお願い差します」

『はい、お願いします』


ガチャ。

電話が切れる。

「兄さん、どうだった?」

「明日一時に面接だとよ」

「そう、良かったじゃない」

「まあ、そうなんだけどな」


試験の合格通知がきた次の日。

俺はとあるコンピューター会社に面接の申し込みを入れた。

時期がおかしいにも関わらず、面接を受けれたのはありがたいことだ。

しかし、

声色が適当にあしらって帰そうという声だった。

デスゲームで人の声色を伺わないといけないような命令があったからか身に付いた才能だ。

それのおかげかほぼ全ての人間の声色を聞くだけで相手の態度がわかるようだった。

つまり、あの会社は多分入社できないと思っている。

相手の気持ちも分かる。 今の時期に新入社員ってのもな。

また探さなきゃな……。


翌日の昼。

面接は「今の時期にこの程度の人間を入れる訳にはいかない」という理由できっぱりと断られた。

分かっていたが、少しは悲しいものがある。

そして園葉は俺が落ち込んでいると思ってか、「兄さん大丈夫!?次は絶対いけるよ!!」と何度も話しかけてきた。 ありがた迷惑だ。

それで今はパソコンで次の面接先を調べている。

「兄さん、悩んでるね。 いいとこないの?」

「まあ、何千と会社を見てきたからな、会社の良し悪しが分かるっていうかさ」

「ん?どういうこと?」

「今会社のホームページ見ていてさ、外見とか載ってるのを見るとどんな雰囲気の職場かっていうのが分かるんだよね」

「なにその能力…」

「そういうこと言うなって…俺だって分かってる、あんまり使えない能力だって…」

俺は妹にけなされながらも検索していた。


20分後。

「お、ここいいな」といい場所を見つけた。

株式会社シグナル。 中規模のIT企業だ。

俺はすぐさま電話番号を確認し、電話を掛ける。


電話したところ、明日14時に来てほしいとのこと。

正直、自分はこの会社が面接をしてくれるとは思っていなかったのでとても嬉しかった。

さて、今日は時間があるし、妹とでも遊ぶかな──。


次の日。

妹とは勉強したいとのことで断られたが、俺は株式会社シグナルに到着した。

俺は会社のピンポンを押して出迎えがくるのを待つ。

「しかし、こりゃ酷い外装だな」

その見た目は錆のついたかなり焼けたような外見。

ホームページ見た限りではもっとよかった気がするんだよなぁ。

俺は少し不安になりながらも会社の人を待った。

そして二分後。

会社の自動ドアからウイインと、スーツを来た弱冠20程度らしき青年が現れる。

「こちらへどうぞ」と中に案内され、恐る恐る中へ入る。

案内されたのは応接室で、その道中にオフィスが見えた。

その際に見えた風景は異様。 外見とさほど変わらない錆に古い厚みのあるパソコン、仕舞に見えるのは少量の血。

はっきり言ってここがふつうの場所とは思えない。

もしかするとここって、ブラックなのか?

そんな疑問が脳裏によぎる。

いままでここまで酷い有様を見たことが無かった。

ここから引き返したい。 だが、この会社に入ることを断る理由も思いつかない。

俺は引き返そうと思うも、応接室についてしまう。

ドアを開け、見てみると一つ空いた椅子とテーブルを挟み三人の少し年上ぐらいの青年がいる。

「どうぞお座りください」と出迎えてくれた青年が俺に伝えたのちに応接室から去っていく。

俺は抗うことなく席に座ると、真ん中の人が俺に話しかけてくる。

「君はなんでこんな時期に就活なんてしているのかな?」

今は10月。

就活シーズンはもはや数か月後と数えるほどにもなってきている。

俺は隠すことなく「今の今まで就職できていなくて」と答える。

「それは大変だね」と返される。

そこに続き右の人が「すごいね君」と少し引き気味に答える。

俺はどうしようか悩む。

しかし、ここで相手から思いがけない言葉が真ん中の人の口から耳に届く。

「ここ、ぶっちゃけた話、ブラック企業なんだ」

俺は額に汗を垂らしていた。

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デスゲーム生還から始める社会生活 柊奏我 @glandleave

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