社会へ足を
唐突
そもそもなぜ今大学にいるのか。
それはとある日に遡る。
「兄ちゃん、ここ数か月で数学完璧じゃん!!もう数学だけなら私より上だよ!」
「そ、そうなのか? だけど、これって面接で伝えるのって難しいんだよなぁ」
「え?兄さん、高卒認定取りにいかないの?」
………………………………………………………………。
忘れてた。
そりゃ面接で「私は高校中退になってますが高校の学習はできます!」って伝えても信じないわけだ…。
なんていう、ギャグじみたことがあった。
というわけで今このようにして試験会場にいる。
一時間目に受けるのは英語。
その試験は二階、3-2教室。
俺は顔をパンと叩き、教室へ向かっていった。
予定通り、高卒認定試験は英語から始まった。
俺は勉強を怠ることなくしてきたためつまずくことはなかった。
それから二時間目、三時間目と何か起きることもなく四時間目まで時はすぎていった。
昼食。
母親が作ってくれた弁当をバックから取りだし、机に広げる。
箸を手に取り、弁当を食べ始める。
午前の疲れを癒してくれる、とてもいい味だった。
昼食を食べ終わり、ふと辺りを見回していると三人でたむろしている人たちを見かける。
きになり、聞き耳を立てて話を聞いてみると、
「いやー、社会のあの選択問題マジで引っ掛かりそうになったわー」
「マジかよ!?俺も俺も!やっぱ同じ学校中退してると感覚同じなのかなー?」
「中退はシャレになってないけどまあ、感覚は一緒かもね」
「ははは、マジそれな!やっぱ同じって大事だな!何事も一緒に経験していった方がいいよなー!」と、同じ学校を中退した三人組だった。
中退ってどういうことだよと思うが、その反面、友達っていいなとも思った。
ああやって同じ経験して、競い合って、同じ目標に向かっていく。
そんな友達、俺にはもういないしな。
ただ、あいつとよくテストの点数競ってたなと思い、少し悲しくなる。
俺の親友、
ある昔の日。
「ねーねー、国語の点数どーだった?ゆーやん」
こいつが窪田京。高一だ。
ゆーやんとは俺、空我祐介のことである。
「まあ、ぼちぼち。 ほれ、点数。」
俺は机の中をガサゴソを探り、国語のテストを京に見せつける。
「あーっ、ゆーやん私より2点上!おーしい!!」
「はは、そりゃ残念だったな」
そんな他愛のない会話。 どこにでもあるセリフ。
だけど、それが幸せだったんだ────。
そんな事を思い出す。
ま、そんな事気にして高卒認定に集中出来なくなるのは嫌だな。
俺は昔をふっ切って、机の前に集中した。
六時間目が終わった。
俺は後ろに体重を乗っけて、ため息をこぼす。
終わった、テストが終わったんだ。
そんな数年ぶりの感覚に懐かしさを覚え、帰るための準備を始めた。
帰る途中、妹から電話がきた。
『もしもし、お兄さん。 試験どうだった?』
「まあ、ぼちぼちかな…」
『ぼちぼちって、兄さんらしいね』
「いや、完璧とかって失敗したりしたら恥ずかしいじゃん?」
『兄さん!失敗とかいっちゃ駄目!そーいう事いうから私が心配するんだよ?』
「はは、そりゃすまん。 まあ、きっと合格してるさ」
『きっとじゃないよ!絶対してる!!』
「おう、ありがとな。 元気でたわ」
『それなら良かった。 それじゃ、家で待ってるからね』
「おう、じゃあな」
『うん、じゃあね』
俺は携帯をしまい、笑いながら帰路をたどった。
やっぱり、俺っていい妹に出会ったな────。
一ヶ月後。
午前十時過ぎ、妹は家で廊下をどたどたと歩いている。
「園葉ー、うるさいぞー。 そんなんしても時はすぎんぞー」
「だってお兄さん、今日結果でるんだよ?」
「いやまあ、高卒認定合格してるかは気になるけどさ、どうもなんないだろ」
そう、今日は高卒認定の結果が届く日だった。
今日で全てが決まるが────。
ストン。
ポストから音が聞こえる。
合格の知らせか?と、玄関まで足を運び、郵便物を手に取る。
予想通り、内容は高卒認定の通知だった。
本当にこれで決まる。 そう思うと手が震える。
妹を呼び出し、一緒に結果をみることにした。
「いよいよだね、兄さん」
俺は郵便物の口を開け、中の紙をゆっくり取り出す。
結果は…?
合格。
そう書いてあった。
高卒認定結果発表の紙に。
「やったー!兄さん、合格だよ合格!!高校卒業だよ!!」
「高校卒業ではないがやったよ!高卒認定取得だ!!」
俺ら兄妹は子供みたいにはしゃぎ転がっていた。
あとで見返すと俺はかなり余裕で合格ラインを越えていた。
やっぱり努力は大事だなと感じ、その日は家族とお祝いをしていた。
今日ぐらいははしゃいでいいじゃないか。
明日から歩き始める、過酷な就職前ぐらい。
それから、俺は色んな会社に面接の予約をいれ、明日の就職に向け準備した───。
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