感動したい孫と裏切り爺ちゃん
さくらそうか
【1】―― これは宝の地図です。
『これは宝の地図です。presented byじいちゃん。 これから送られてくる7つのアイテムを集めて宝を探して下さい。 記念すべき最初のアイテムは――』
オレはそう書かれた手紙をぐしゃりと握りしめた。なぜなら、今日届いた1つめのアイテムが……
『ユウくんが入学式でおもらした時のパンツだよ。懐かしいだろ(爆)』
「なんの嫌がらせだ爺ちゃァァァーーーん!」
ご丁寧に木箱で梱包されていた幼児用白ブリーフを引っ掴んで、オレは思いっ切り遺影に投げつけた。ガシャンと派手な音を立てて、爺ちゃんの笑顔はひっくり返る。
「ユウなにしてるの? 部屋でパンツ投げるの止めなさいって言ってるでしょ~中学生にもなって」
母親がまるでオレが日常的にパンツを投げているかのように嗜めてきたが、断じてオレにこんな趣味は無い。先週亡くなった爺ちゃんから届いたサプライズプレゼントに、ちょっと興奮しただけさ。
「あらあらぁ爺さん。ユウくん怒っちゃったじゃないのぉ。プレゼント作戦失敗だねぇ」
妙にのんびりした口調でふふふと笑いながら、倒れた遺影を直しているこの人は婆ちゃんだ。俺は爺ちゃんからこっぴどい仕打ちを受ける度に、この菩薩のような婆ちゃんに慰められてきた。
爺ちゃんは昔から俺をいじめて――本人は多分遊んでやってるつもりなんだろうけど――楽しむのが大好きな人だったんだ。
物心ついた頃からお年玉はもれなく搾取されてきたし、変質者になりきって下校中のオレを追い掛け回したり、オレが淡い初恋に目覚めたことを学校中に言い触らしたり。(校門で『祝★ユウくん初恋デビュー』と書かれたフリップを持ち、まるで宗教の勧誘のように手当り次第声を掛けるという、あくどい手法だった)
だからってこんな……死んでもやるかよ普通。
「婆ちゃん。爺ちゃんこれいつから準備してたの?」
「うん? 入院した時ぐらいからぁ色々準備してたみたいだねぇ」
てことは、死ぬ1ヶ月前じゃねぇか。治療に専念もせず、孫をいたぶる計画に余命を費やすとは……。
その執念、燃やす意味ありますか?
もしかして残り6つのアイテムもこんな感じなのか?
くそっ! 来るなら来い! もうこの世にいない爺ちゃんなんて、怖くないもんね!
「ふんっ」
俺は恥ずかしい染みがついた幼児用白ブリーフ(戦隊シリーズイラスト入り)を拾い上げて、ゴミ箱に投げ捨てた。
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