【4】―― 五重の塔
そのまた翌日――今度はA4サイズぐらいの茶封筒が届いた。
開けると、中には『五重の塔』と書かれた習字の紙が入っていた。
『ユウくん、字も下手だよね(爆) 自分の名前くらい書けるようになろうね(爆)』
バカの一つ覚えのように(爆)2連続の手紙の内容はこれだけだった。他には何も書かれていない。
この習字はオレが4年生の時、冬休みの宿題で書いたやつだ。特に初めての作品だとか、賞を獲ったとか、はたまた爺ちゃんが絶倒するくらい抱腹したとか、美味い記憶も苦い記憶もない。強いて言えば、字を大きく書きすぎて名前を書くスペースが無くなったことぐらいだ。オレは自分の名前である『悠』の文字が書けずに、『ユウ』とカタカナで誤魔化したんだけど……。
どうした爺ちゃん。これを今更バカにされても痛くないぞ。だってこれは別に恥ずかしい失敗ではなくて、確信的にやったことなんだから。
今回はやけに手ぬるいな――と不審に思った時、オレはその法則に気づいた。
「ここまで全部、学年ごとに並んでる」
最初のおもらしパンツは、1年生の物。
2つ目のドングリは、2年生の物。
3つ目の運動会写真は、3年生の物。
そして今日届いた4つ目の習字は、4年生の物だ。
それから、もう一つの法則にも気づいた。
「これ、次の学年が示唆されてるんだ」
ドングリ3つ――次が3年生。
徒競走4位――次が4年生。
五重の塔――次が5年生。
あれ待てよ。最初のパンツは何だ?
んんんんー?
もしかして……。
「パンツ――
パン
くだらねぇし分かり辛ぇ……。
まったく、変なとこ凝るなよな爺ちゃん。病床でやることかよこんなの。もっと真面目に治療に専念してくれてりゃ、今頃元気だったかもしれないのに。
「余計なことすんなよな……」
大人しく、もっと長生きすれば良かったんだ――。
オレは遺影の笑顔がもう戻ってこないことが、とてつもなく悔しくなった。
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