ファンダメンタルズ

作者 星崎ゆうき

60

21人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

時間を戻すような、そんなことがもしできるのなら。

そう考えると、脳裏にちらつく後悔は私にもあります。
あのとき、あんなこと言わなければ。
もっと早く、行動していたら。
でも、それらは絶対に取り返せない。

当然のようにそうあきらめているけれど、この物語の主人公の瞬は、橋から飛び降りた日、二十年前にタイムリープしてしまいます。

まだ高校生の自分。
つるんでいた友達。
そして、初恋の女の子・恵。

懐かしい夢を見ているような感覚でしたが、次第に感情が鮮やかさを帯びていきます。
恵への想いも自然と吹き返す中、ときおりちらつく、記憶と違った会話や物事。
そんな中、きっと良くないことだと分かっていても、瞬はささやかな「こうしておけばよかったこと」を変えてしまいます。

それが瞬と恵の運命を大きく変えて、今度はそのゆがんだ運命から大切な人を守るため、瞬は再びタイムリープに旅立って──

心の病がまだ理解されていなかった頃。
そんな時代に心を傷めていた恵に、現代を生きる瞬ができたことは?

SFなのにノスタルジック。
ふと昔の自分を振り返るような、胸を締めつけてくる物語です。

★★★ Excellent!!!

日常的な負の感情と倦怠感から生じた孤独感と希死念慮を抱えた主人公が『宙の名前』という一冊の本に挿んであった一枚の写真を見つけたことから記憶が呼び醒まされるように生じたタイムリープ。リープ先は主人公が漠然と人生をやり直したいと思っていた20年前の高校時代―。20年後の記憶を抱えた主人公の視点で物語は展開していく―。主人公は当時の恋愛と友情に20年後の思考力で向き合い、当時とはずれていく展開と現象に応じながら、死への恐怖を認識する―。
守りたい気持ちをどう向けていくかということについて哲学的な観点から考えてみたい人におすすめの物語だと思いました。

★★★ Excellent!!!

ある地点に戻ることができるなら、自分だったらどこに帰りたいだろうか。と考えたことがある。

もしも高校生に戻ったら、主人公のようにすぐに生活に順応できるかな。
その時の記憶なんてもう曖昧だと思っているけど、案外、身に沁みているものなのかもしれない。

先日、母校に行く用事があって驚いたのは、校舎の位置や何をしていたかが鮮やかに蘇ったことだ。
しかも体育館の匂いが当時のままだったから、特別な何かが自分が居た場所には潜んでいる気がした。

第7話の色彩の感覚が印象に残った。
こどもの頃、クレヨンで描いた虹の色はきっぱり7色で、そこにははっきりとした境界線があった。
でも、ほんとは色は混ざり合って徐々に変化していく曖昧なもので、それを知る大人になったことは、誇らしい気がする。

主人公がタイムリープした理由は何だったんだろう。
昔の姿に戻っても中身は今の自分。経験をしてきた過去を積み上げてきた自分。
そこに意味がきっとあるのだろうと、グングン惹きつけられる。

しかし、一歩ちがう行動をとれば、もうその過去は進んできた過去とはちがってしまう。
望むような過去にするためには、一体どうしたら良かったというのだろう。

★★★ Excellent!!!

もし過去に戻れたなら、その過去を変えようとしますか?
自身が過去へタイムリープすることによって変わり始めた未来。自らの持つ記憶と経験が、未来を変えるのに一役買ってしまう。
哲学的な側面もありますが、主人公の心情にスっと寄り添うことの出来る丁寧な描写が魅力です。また、現代では主流ではないポケベルの使い方も上手いなと思います。
瞬が過去に戻った意味。瞬と恵の間で定められた運命。「ファンダメンタルズ」の意味。そして迎える結末……。
ぜひ最後まで読んでみてください。あなたの心に、この作品に込められたメッセージが届きますように。

★★★ Excellent!!!

丁寧に紡がれた言葉たちが織りなす世界は本当に美しく、立ちのぼる情景にとても心惹かれます。
大切な事が沢山沢山込められていて、その想いに涙がこぼれました。

人の心とは。
人が持つ感覚とは。
本当の本当の事ってなんだろう。
そう自分に問い掛け、世界にも問い掛けたくなる。

すごく好きな作品です、ありがとうございます!

★★★ Excellent!!!

 様々なタイムリープものがある中で、この作品には深いテーマが散りばめられており、そのどれもが線で繋がり、一つの物語を生み出している。運命とは何なのか、生きること、死ぬこととは。そして、初恋という青春の日々。こんなにも世界に入り込み、まるで自分がそこにいるような、そんな錯覚をしたのはこの作品が初めてだ。
自分はこんな作品が読みたかった。

★★ Very Good!!

哲学的な語り口で綴られる物語です。

人の生死の意味や運命などの途方も無い概念に対して思考する姿は、なんとも情緒的で人間らしさを感じます。

ただ自殺を選ぶことがいけないという思考停止した結論ではなく、本人を慮る姿勢や、心の不可思議にもメスを入れているように思います。

タイムリープ物ということで、やはり重要なのはエンディングだと個人的に思います。

いやはやこの結末は、予想した中ではある意味一番のものでした。

運命を捉えて生きることを考える時間も、良いのかもしれません。

★★★ Excellent!!!

正直、作者さまに対して、
「なんで終わらせちゃったんだよ!」
って思いました。
不思議な展開に、先を読まずにはいられない。
そんな数日だったから。
でも、この終わり方だから、こんなに余韻が残るのでしょう。
ぜひ読んでみてほしい作品です。

彼女を想う主人公の葛藤が、切なくて、胸に迫りました。
本当に、大事に思っているのだなと。