今日もまた俺は彼女に思考を読まれている

作者 城崎

758

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★★★ Excellent!!!

心を読めるヒロインとの会話とは一見すると書き易いネタかもしれないが、実際はそうではないでしょう。
読めるからこそ難しいこともあるのはないでしょうか。
その設定をうまく活かした会話のテンポの良さと機微には唸らされました。
互いのことが知られてしまうから、本当の良さがわかる。
そんなもどかしい関係はラブコメ好きなら一度は見ておきたいものです。

★★★ Excellent!!!


 相手の考えを読める超能力は数多く取り上げられてきたが、その人気は衰えることを知らない。それは、私たち知的な生物にとって完全には理解し合えないことの一つであるからだと思う。
 その点、だからこそ考えを読めるということを軸として物語を進めていくことは難しい。

 この物語では、その主軸を踏まえた上で、さらに限定で”一人の声しか聞こえなくなる”という設定が盛り込まれている。
 彼と2mの中ならば、彼女の能力はほとんど封じられる。しかし2mの外では、彼が彼女に思考を読まれることは無い。

 他人の思考を読むことが日常であった彼女の、やはりどこか掛け違った価値観に思想を前に、彼もまた、やはり少しずつ変えられていく。
 面白いのは、その成長が確かに感じ取れるからだ。

 彼女に思考を読まれる。しかしそれさえも日常と思えるようになって、そしてその心は発展していく。その様が生き生きと描かれ、そして細かな言葉に感情が散りばめられている。

 また、成長を感じる一方で作者の独特な個性には笑みを絶やせない。他人の思考を読める彼女が、実は蜜柑好きで、しかもそれが結構重度だという……。
 ギャップをしっかりと取ることでより身近に感じるように采配された設定だが、蜜柑を重度に好きだという方向性は考えても居なかった。
 
 そこから、蜜柑好きの同志を登場させたり、観観(みかん)という名前を使ってみたりする部分が酷くユニークで面白い。
 恒例に則って、そういう人物こそ重要であることがさらに面白い。地味な事から発展した友情と蜜柑の輪が、やがて大きく彼女の運命を変えていく姿を読みながら感じ取る度に、作者のストーリー性の高さが伺えてくるのだ。


 多くの話の始めが、空白無し行空け無しの読み辛いようになってしまっているが、そこを乗り越えるだけの価値観は十二分に存在する。
 是非とも挫けたりせずに、最後まで読… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

人の思考が波のように流れてくるヒロインと、普通の男子高生。どういうわけか二人はいつも一緒にいて、今日も何気なく、しかしどこか奇妙に会話は進む。
会話主体の物語としては、一番好きかもしれません。脳内で勝手に声優決めてリピートしてますww

★★★ Excellent!!!

 自分の学生時代にこんなことは起きなかった。
 ヒロインが「心を読み取る」超能力を持っている時点でそれは当然なのだけど、それを抜きにしても、友達以上恋人未満のさらにそのまた未満みたいな、精巧なガラス細工じみたエピソードとは縁のない生活を送ってきた。
 だから彼らが羨ましいし、できることならもっと眺めていたい。

 そして、彼らの関係性という名のガラス細工は、物語が終わる頃には今よりも美しく、かつ見た目より遥かに頑丈に出来上がるのだろう。
 結末にたどり着いていなくてもそう思わせてくれるくらいには、この作品は温かくて綺麗だ。

 試しに読んでみてもらいたい。
 気づけば不器用で繊細で優しい二人のやり取りを、ディスプレイ越しに陰ながら応援してしている自分が見つかるはずだ。

 憧れるけどおそらく自分には訪れることのないであろう世界。
 この作品が持つ価値と、現実世界と決して埋まることのない隔たり。この二つを言い表す言葉を私は一つしか知らない。

 この作品は、尊い。

★★★ Excellent!!!

心の声が聞こえてしまう女子・如月と、やたら心の中の独り言が多い男子・北斗の高校生ペアが織りなす日常の物語。

心の声絡みの特殊能力は目新しくないが、こと小説というメディアにおいては独特の位置づけになる。たとえば一人称が話者の"心の声"が全て筒抜けであるような文体である一方で、三人称は神の視点とも言われ、しばしば複数の作中人物に成り代わりその心中を代弁するものだから、まさに神の所業である。
これで調子に乗ってあらゆる人物の心境を説明されると作品にならないのだが、うまく利用すると叙述トリックにもできる。

本作ではトリックが駆使されてはいないが、他の人の心の声に脅かされないようにするために、如月が北斗のそばにぴったりと張り付いているという形で必然性が演出されている。
このことで二人だけの会話で進行することも正当化され、付随的に二人だけの世界が展開する。

能力はファンタジーというよりはラブコメのための舞台装置であった。月並みだが、この能力を逆手に取った駆け引きの展開を期待する次第。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=村上裕一)