明日が次の今日になる国

ちびまるフォイ

あし~たがあ~る~さ~♪

『みなさん、昨日ついに明日を食い止める装置の開発に成功しました。

 これでみなさんずっと今日を楽しみ続けることができます』


見ていたアニメから緊急放送になったその意味を最初はわからなかった。

その日の夜に目が覚めて、カーテンを開ける。いつも通りの日常。


「明日が来なくなるっていったい何なんだ? 普通じゃん」


いつものように学校に行くと時間割が変更されている。


「みなさん、明日が来なくなったので

 それぞれの科目に遅れが出ないよう全科目1時間ごとの時間割になります」


「えぇっ……しかも体育なしかぁ……つらい……」


また次の日にでもやればいいのに。

へとへとになって学校から帰って、眠り、また翌日になる。


「はぁ……今日も学校か」


天気は晴れ。

学校に行くとまた授業が始まった。


同じ今日をループしているわけではないので、

授業内容も少しずつ進展している。


「あれ? なんか今日欠席する人増えてない?」


「なんかバカバカしくなったみたいだな」


「まあ、明日が来ないってことは受験もないしな」


今日にテストや受験が予定されてなければ訪れることはない。

ということは、もう勉強することもないというわけだ。


「俺も明日学校休もうかな」


「明日じゃなくて、次の今日だけどな」


「まぎらわしいよ」


学校から帰ってまた寝て次の今日を迎える。天気は晴れ。

クラスは学級閉鎖も視野に入るほど欠席者が目立った。


「なんかここまでくると、学校に来てる方が間違ってる気になるな」


真面目に授業の準備をして待っている。

先生はいつまでたってもやってこなかった。


「あれ? 先生は?」


職員室に行ってみると先生は書置きだけ残していた。


"明日を知った今、僕は自分の好きな今日を楽しみます。

先生としてではなくひとりの人間として"


「……つまり、サボり?」


「「「 やったーー!! 」」」


先生が来なくなったので合法的に学校に来なくて良くなった。


昼間からゲームセンターに入って遊び倒す。

すっかり日も暮れたころ、友達を別れる。


「じゃーな! また明日も遊ぼうぜ!」


「おい!! ダメだって!」


急に友達は真剣な顔でつめよった。


「ダメって何が?」


「知らないのか? 明日を止める装置が起動してから、

 明日や明後日の未来の約束は法律違反で逮捕されるんだぞ」


「いったいなんでそんなこと……」


「知らないよ。それに装置には仮に未来の約束をしても

 今日がはじまる瞬間にすべて記憶から抜かれるんだ」


「徹底してるなぁ……」


明日が来ることと、次の今日が来ることは変わらないと思っていた。

でも未来に約束することができないところが違った。


翌日、紙に書いていた友達との約束もスマホに残したスケジュールも

はては自分の頭の中に刻み込んだ記憶もごっそり消えていた。


「……なんでこんなところに白紙の紙が置いてあるんだ?」


そんなこんなで、晴れ渡る今日がはじまる。

学校が無くなった今、友達と遊びまわるばかりだったので、今日は趣向を変えてみた。


「あの、研究所にいきたいんです。誰でも立ち入りいいんですよね?」


「それは大人だけの話だ。君はまだ子供だろう。まだ早すぎる!」


「明日を止める装置がどんなのか見たいだけなんです!!」


「ダメだダメだ! えいっ!」


明日予測研究所に工場見学気分で行ってみたが、年齢制限でつまみ出された。

歳をとらないし髪も伸びないし体重も変わらない。


でも明日の約束ができないのは変えたい。


「こうなったら……!」


こっそり研究所の窓から中に侵入した。

中にはいかつい大きな機械が塔のようにそびえていた。


「これが装置か……」


複雑な動作や監視カメラでもあったらどういしようかと思ったが

みんな今日を過ごすのに必死でやってこないのか警備は薄かった。


抜き足差し差しで装置の近くにやってきて、こっそり装置の電源を切った。


「よし、これで明日が来るはずだ。

 どうせ明日も次の今日もみんな区別できないに決まってる。

 変化があるから毎日面白いんだ」


侵入した研究所から抜け出し今日を終えた。

明日のスケジュールや明後日のスケジュールを入れ、目覚ましをかけて寝る。



ジリリリリリ!



翌日、目覚ましの音で目が覚めた。


「やった! 明日だ! 明日が来たんだ!!」


日をまたぐ目覚ましは未来の予約のため、装置が起動している限り動くことはない。

目覚ましがなったということは明日が来たんだ。


天気は晴れ。

前の今日とまるで区別はつかない。

俺以外に誰も明日が来てるとは気づかないだろう


昨日と違うのは未来へと自由を手に入れたこと。


「よーーし! 今日はどんな約束をしようかな!!」


外に出ると、雲の切れ間から何かが見えた。


 ・

 ・

 ・



『先日、落ちてきた隕石により一国が完全に消滅しました。

 その国では最終日ぎりぎりに、明日を来ない装置を完成させたものの

 何者かによって停止されてしまっていたようです』

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