新しい始まりは


 強烈な朝日で目が覚めた。


 目を開けると同時に日差しを直視してしまい、素早く手で目を覆いうつ伏せになる。そういえば昨夜、カーテンを閉めた記憶がない。


 ため息をついて、身体を起こし座り込む。久々の布団は少し寝苦しかった。

 それでもこうして祖父母を訪ねたのは、二人が営む和菓子屋で、8月から手伝いをさせてくれないかと頼み込むためだ。今、何もせずに毎月お小遣いをもらっているという状況を、変えたいと思ったのだ。

 どういうわけか話をする前に寝てしまっているけれど。


 欠伸を一つ。


 おざなりに髪を手ぐしで整えていると、昨日見た夢がぼんやりと思い出された。といっても浮かぶのは断片だけで、顔の見えない小さな子が頭を撫でながら


「もう行くねっ――よい夢を」


と言っているものだ。夢の中で眠る事を促されるとはこれ如何に。まあ所詮夢の中の出来事、訳がわからないのはさほど不思議なことでもないか。


 暑い日差しから逃げるように布団から出て、なんとなく時計に目をやる。


 11:20。



「……寝すぎた」



 サアッと血が引く。急いで布団をたたみ、洗面をしたあと居間へ急ぐ。


 寝起きが悪いのも直さないといけない。いつまでも祖父母に甘えて頼り続けるわけにはいかないのだから。

 彼らは、3ヶ月前に最後の家族を失い自暴自棄になっていた私を、支えてくれた人達だ。

 その優しさに報いるためにも、私は自立して生きていける人間になれるよう、自分を変えてみせる。


 それが今の、私の夢だ。




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夢見るバク 月乃宮 @tsukino_miya

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