概要
タルコフスキーとリストの美意識で書かれた
それでは聴いて下さい、私の『巡礼の年』――。幼少期からピアノを習っていた上山鳴美は中学三年生の時にいじめを受けてリストカットをする。一命を取り留めるも左手に障害を負い、ピアニストの夢と音大付属高校への受験を諦める。全てを忘れるために千葉から神奈川の叔母の家に移り、地元の高校の普通科を受験。高校生活が始まるも誰とも話さず、第三音楽室から聴こえるジャズを聴きながら一人で下校。図書館に通い、片目を失った野良猫だけに心を開いた。二年生になり、美術部に所属する辻本渉と席が隣になり、その陽気で優しい性格に心を開き始める。ある日、美術の授業で渉の描いた微笑む婦人像を見た時、鳴美はその絵からドヴォルザーク『チェロ協奏曲』が鳴っているのを聴く。けれども、悲しげな旋律と婦人の笑み、渉の人柄は合致しなかった。しか
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