私にとってのトトロはメイとサツキの二人の成長物語であった。
田舎に引っ越してこれまでの環境と違う場所に心を躍らせる二人が未知の生物と遭遇し、母親の病気を通じて成長していく。
メイは言わずもがな母親にべったりと甘えたい年頃であるにも拘らず、離れ離れに暮らす日々に対する不満を、トウモロコシを届けるんだと言う冒険を通じる事によって甘えるだけではなく母親対して役に立ちたいと思えるように。
サツキもまだまだ親に甘えていたい年頃でありメイと遊んであげると言うより一緒に遊んでいると言った印象があったが、母親の入院延期からのメイの冒険に引っ張られるように姉としての立場を強くする物語。
そんな風に考えていました。
確かに私が認識して楽しんでいたトトロは2割と言った処だったなと思い知らされる、そんな内容でとても為になりました。
読み手としても書き手としても一度は読んでおきたい、そんな内容です。
今まで1ページかかって表現していたものが、たった1行で現わせるようになるかも知れません。この作者、別の作品で知って凄いなあと思っていたらこんな物を書いていました。先人の知恵を知らずにそれを超えていくことはできません。
これを読まずに何かを書くなんて勿体ない。
私が生まれたのは、あのアニメに出てくるような田舎町でした。トラックの荷台に乗って移動することも、咎められることが殆ど無いのどかな文化です。
トラックの荷台に乗る時は、大人から「本当はいけないことだから、お巡りさんに見つからないようにね」と釘を刺されるので、ワクワクした気持ちと若干のうしろめたさが内在した非日常だったことが思い出されます。
トトロの冒頭で、メイに「隠れて!」と言った心境は、まさにこの時の私のものと同じでした。このシーンで、私には朴訥な風景よりも、大人の言うことを真に受けてしまう純真な頃の自分を見てしまうのです。
同時に、だいぶ擦れてしまった今の自分から見て、純真さを持った子供たちを前にそれを保ってあげたいと願う大人の目線の高さでも見ていました。
もちろん観る人によって経験は違いますから、受け取り方も十人十色だったはずです。
ですが、これらのほんの短い間に、少なくとも何かを狙って、人の持つ様々な情動に踏み込んでくる技術が込められていたことは間違いがなく、その緻密さには改めて驚嘆するものがあります。
この創作論では、トトロを創作者の視点からミクロの技法に絞って解説していきます。数々のシーンに散りばめられた気付きは「トトロがなぜ名作たり得たのか」を理解する一助となるでしょう。
是非、メモを取りながら読み進めることをお勧めします。
そして、そのメモはこの作品の後半になって俄然活きてくるのです。この創作論の凄いところは、分析・論評に留まらず、後半はそれらで得た知見を基に実践に取り入れようとする応用編なのです。
あなたがこれを読み、トトロ以上の名作を生み出すことを願って。
表題の映画『となりのトトロ』は、かなりの割合の書き手が観たことがある名作ながら、「創作物としてここが優れている」という話題にはあがりにくい作品なのではないでしょうか。
誰でも知っているのに、本文で言及されている台詞は、意外と覚えていなかったりする。そんなさりげないセリフやエピソードをピックアップして、観客を引き込む工夫をわかりやすくかみ砕いて説明してくれます。
特に最終話の温かくしかも情熱あふれる励ましは、わたしのような発展途上の書き手にとって必読の価値ありです。
全体の構成もよく工夫されています。それほど長くもなく、気張らずに読めます。つまみ読みせず、ぜひ最後まで読まれることをお勧めします。