第5話 本喰喰本


 本喰ブック・イーターという化物モンスターがいる。

 年経て力を蓄えた古書を好み貴重な蔵書を喰い荒らすと、希少本の所蔵者から恐れられていた。


 早朝。

 黒服の男が本喰ブック・イーター捕獲の罠を確認しに、王立図書館を訪れた。

 仕掛けた罠を覗き、男は安堵の溜息を吐く。


「食い意地の張った本喰で助かった」


 視線の先には、大人の一抱えもある巨大な本。

 否、よく見れば分厚い小口は紙束ではなく、鋭い鋸歯だ。


「よくやった、贋本ミミック


 本喰を喰った本を男は褒める。


 ソレは化本ブック・モンスター。時空を渡る本の魔物。

 中でも贋本ミミックは名の通り、立派な希少本に化けて獲物を誘い、相手を食らう厄介者だ。

 だが、こうして飼い慣らせば役にも立つ。


 満腹ご満悦の贋本に錠前付きの本帯を巻き、背負った男は図書館を出て行った。


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第47回Twitter300字SS お題「食べる」より

300字限定シリーズ「化本」。


企画者様の「ダークな話が多くなりそう」というお言葉を聞いて、癒し系要員に名乗りを上げてみました(笑)

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化本シリーズ(300字SS) 歌峰由子 @althlod

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