作品紹介文を読んだだけでは本作品の面白さを予測できないだろう。
好きな女性に告白しようが、しまいが、そんな事は二の次だ。主人公には一大事だが、読者の醍醐味は別の点にある。
タイムトラベルをテーマにすると、まず直面するのが、「自分の親を殺すと、自分の存在は消えるの?」との疑問。
この矛盾に関しては、上手く乗り切っている。ネタバレになるので、カラクリは言わない。
普通、その点だけでも及第点なんだが、その延長線上で、終盤に主人公が取った行動にビックリ。「これは遣られた!」と膝を打つ。
しかも、サプライズな展開は二段構えで、最終エピソードでは意外な結論で待ち伏せしている。
だからと言って、終盤から読むのは止めて下さい。本作品は「俺だったら別のアプローチをするがな」等とツッコミを入れつつ、最後には「参りました」と脱帽するプロセスこそが醍醐味なのです。
ただ、時間跳躍に興味の無い方には退屈かもしれない。
タイムリープ。
SFというジャンルにおいては、王道のテーマと言っても良いかと思います。
この作品の特徴は、その手の内が序盤に明かされているところ。
さらに物語は単純明快。
なんどもなんども二日間をやりなおす。
ただ、想い人の謎の「死」の真相を知るために。
ネタバレにならない程度に申し上げますが、
本当、わりと何度も、タイムリープします。
それだけに、途中で退屈になってしまう危険をも孕んでいるこのテーマ。
しかしこの作品においてそのような心配はございません。
明かされる謎と、新たに生まれる謎。
そのバランスが絶妙で、中だるみしないで一気に読めます。
特にタイムパラドックス説明パートにおいては、
小難しい言葉が用いられがちな場面でも、
しっかりとしたロジックで噛み砕いて説明されており、
SF初心者の私のような者にもわかりやすかったです。
さらに青春ものならではの、癖のある登場人物たちによる人間ドラマも魅力的。
中学卒業式間近の独特の空気感に包まれて、等身大の少年少女が生き生きと会話します。
そして是非この作品は、最後の最後まで読んでほしいです。
単なる「少年少女の「少し不思議」な物語」という一言では片付けられない、
綿密に練られたタイムリープの構想と意外な展開に、
思わず唸らされること間違いなしです……!