書き出しオンリー 一行小説

神坂 理樹人

2017/11/23

1.真夏の太陽は冷ややかな視線で私を見下ろしていた。




2.お気に入りの本を抜き取ると、本棚から見慣れない詩集がこぼれ落ちた。




3.長い眠りから覚めると、私は開口一番「眠い」とつぶやいた。




4.その昔、天と地を繋ぐ大きなきざはしがあった。




5.人が心に秘めている感情というものは、案外路傍ろぼうの石ほどの些末さまつなものに過ぎない。




6.降水確率が専門家の予想による可能性の数字ではなく、膨大なデータから導かれた割合であることを多くの人は知らない。




7.授業に間に合わせるのを諦めてゆっくりと通学路を歩いていた僕の目の前を、一匹の白い猫が横切った。




8.目の前の男に斬られたということに気がついたのは鮮血の噴き出す右腕だけだった。




9.チラシを差し出したメイドの女の子の黒髪から、ほのかに白檀びゃくだんの香りがした。

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書き出しオンリー 一行小説 神坂 理樹人 @rikito_kohsaka

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