異世界転生してしまった空手家。とにかく強い。そしてとことん空手バカ。
異世界ならではの技を駆使してくる様々な相手を空手を駆使して次々倒していく様は、よくこんな設定思いついたなあ、と感心しっぱなしです。
設定に今流行りの転生ものを取り入れながらもどこか昔のアニメを思わせるノリがどことなくツボにハマります。躍動感あるバトル描写、敵を倒していくごとに少しずつ明らかになっていく世界観。夢中になって読んでいるうちに少年心を思い出し胸が熱くなってきます。
相手を打ち倒すことよりも自分の力を信じて、自分の中にある困難に立ち向かう、カラテで自分の生き様を示す、その姿勢が素晴らしいです。特にラストの戦いは心を撃たれました。
刮目せよ!この熱き戦いを見よ!今こそ空手を信じるのだ!
読むかどうか悩んでいる方も、まずはエピソード一覧に目を通してみてほしい。
……ずっと空手が戦ってるな!?
そう、動くと動かざると、この作品は常に空手と異世界の者たちとの戦いなのである。
その愚直に戦いを求める空手家の主人公には思わず手刀、もといツッコミを繰り出したくなることも多々あり、つまりは序盤から「なんで空手が」と笑わせられつつ、しかし迫力ある戦闘描写に、アクションに疎い読み手でも分かりやすい用語についての説明、そして一章後半から明かされる意外な世界観に知らず知らずのうちに引き込まれる作品なのである。
まだ読み途中ですが、また時間ある時に帯を締めて続きを追いたいと思います。
***
読了したので追記。
これから読み始める方には是非ご安心いただきたい。
最後まで空手バカだった。ぶれなかった。
異世界の強敵に立ち向かうのに、果たしてチートスキルは必要だろうか?
……否。
なぜなら我々が誰しも持っている力、立って歩く能力こそが、自らを奮いたたせ世界を切り開いていく力なのである。
そんなことに気づかせてくれる作品でした。
本作が書籍化された暁には、是非とも劇画調の表紙でラノベ界に殴り込みする様を見てみたいものである。
異世界と言えば転生して特殊スキルとチートで無双してハーレムでしょ!
そんな先入観は、開始1ページ目にして、主人公の拳によって粉々に砕け散りました。
今日からは、異世界と言えば空手です。空手の時代なのです。
私は空手未経験者です。それどころか、武道の類いは、高校の授業で柔道を数回やった程度のか弱い美少女(仮)です。
そんな私が楽しめたのですから、空手経験者の方がどれだけ楽しめたかを想像するだけで羨ましくてなりません。
テンポよく進むストーリーに、次々と出てくる強敵。そして、主人公の一貫した信念。
余計なものは何もなく、そこにあるのは空手だけ。
こんな快作を読まないなんて選択肢はありません。
さあ、今すぐ読み始めるのです!
最後に、とあるキャラクターの台詞を引用して、感想とさせていただきます。
"なんなんだよ……あんたら一体、なんなんだ。なんだよカラテって"
タイトルがもうズルい。
元ネタの作品は不束ながら名前しか知らないのだが、それをもじったこのタイトル、一見しただけで誰が何をやらかすのかわかりすぎてズルい。添えられたキャッチコピーもズルい。
これを読まずにいられるかチクショー!
もともとのSNSでのネタ発言は私も目にはしていたが、まさかそれを本当に一つの作品にしてしまうとは思わなかった。
しかもただ空手バカな主人公がトンデモ勝負にトンデモ理論のトンデモ技で読者総ツッコミ不可避なギャグを演じるのかと思いきや――いや実際にそんな部分もあるが――それだけではない。
ギャグだけではなく、シリアスとの配分がまた見事なのだ。
何のために武術をやるのか。なぜそこまで強さを求めるのか。
理由は武術家それぞれによって異なるだろう。武術をやっていない人間には興味もなかろう。
だがこの空手バカ、もっともっと強い相手と戦いたい、その一心でバカみたいな強敵へと立ち向かう。チートなんぞ不要と豪語し、その肉体と技と精神だけで撃破する。
その姿がまたバカなりに格好良く、他の登場人物はおろか読者さえも虜にしてゆくのだ。
なお、この手の格闘技小説には共通した副作用がある。
読む前には体操着と運動靴の準備をお忘れなく。