空手を信じろ。すべてはそこから始まる。

タイトルがもうズルい。
元ネタの作品は不束ながら名前しか知らないのだが、それをもじったこのタイトル、一見しただけで誰が何をやらかすのかわかりすぎてズルい。添えられたキャッチコピーもズルい。
これを読まずにいられるかチクショー!

もともとのSNSでのネタ発言は私も目にはしていたが、まさかそれを本当に一つの作品にしてしまうとは思わなかった。
しかもただ空手バカな主人公がトンデモ勝負にトンデモ理論のトンデモ技で読者総ツッコミ不可避なギャグを演じるのかと思いきや――いや実際にそんな部分もあるが――それだけではない。

ギャグだけではなく、シリアスとの配分がまた見事なのだ。
何のために武術をやるのか。なぜそこまで強さを求めるのか。
理由は武術家それぞれによって異なるだろう。武術をやっていない人間には興味もなかろう。
だがこの空手バカ、もっともっと強い相手と戦いたい、その一心でバカみたいな強敵へと立ち向かう。チートなんぞ不要と豪語し、その肉体と技と精神だけで撃破する。
その姿がまたバカなりに格好良く、他の登場人物はおろか読者さえも虜にしてゆくのだ。

なお、この手の格闘技小説には共通した副作用がある。
読む前には体操着と運動靴の準備をお忘れなく。

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