もうちょっと読みやすい電子書籍とウェブ小説インターフェイスはないものか。
小稲荷一照
みんなこんなのでよく小説が読めるなぁ
結論は末尾にあるわけだが、有り体に、電子書籍やウェブ小説ってめちゃくちゃ文字を読むのに向いていないよね。
まぁ、もともと面積あたりの密度の低い表音文字の世界の人は余り気にしていないのかも知れなけれど、日本語の仮名交じり文という奴にはそこそこ以上に情報密度があり、また膠着語であるところと助詞と名詞という割りと単純な区分けであるところから、漢字を名詞と看做して名詞としての単語と熟語を追いかけるだけで全文を読むまでもなく文の大意が汲み取れるという特徴がある。
要するに初見の意味の分からない文章を見せられても、名詞のうちのいくらかを軸に前後の助詞を頼りに意味を作ることで読者が理解を得ることができる。
日本語は膠着語であるという文法様式上の不定形さを以って尚、文章の大意把握自体は容易であり、そのことが文盲率を低くしている。
もちろん、読者が筆者と同じ定義で名詞を読み取っているか、或いは曖昧になりがちな助詞の接続が果たして正確に互いに意図をわかちあわれているかは、実は致命的なまでの理解の差を生み、詩歌などではそれは面白おかしく扱われ、小説などでもそのように扱われる。
日本が論理的でない、などとしばしば責められる結果になるのも凡そ読み手側と書き手側の文化背景や連想能力の違いによるものが大きい。
つまりなにが言いたいかと云えば、こういう訳のわからない表題でわけの分からない文章を読んでいる読者の人々は、おそらくおよそ中身には目もくれず、幾つかの単語をつなぎ合わせて結論を得ているに違いないということだ。
つまりはだ。
既にここまで数百文字を書いているが、大方の人々は先頭の数十文字で飽き、幾つかの熟語を適当に眺め、結論を求め末尾に目を移しているだろうということだ。
基本それは外国語の論文でも大差はない。
さっくりと文章の前提と結論があるだろう先頭と末尾を読めれば、説明の意図がある論文においては事が足り、あとはその結論の要旨の内側にある様々の単語を探して、文章の中を彷徨うことがひとつ日本語に限らず文章を読み意味を汲み取る上で重要になる。
文字でできた迷宮のようなものをいちいち迷い込む必要があるのは、面白半分で迷子になりたい娯楽小説読みくらいだ。
一種の知的な迷路遊びである小説は、当然に文字の或いは言葉の迷宮に遊ぶことを目的としているのだから、情報としての文字の読み方とは違い、ベッタリと面として文章を読む必要がある。
それは時に文章の前に戻り或いはそこから幾らか飛んで進み、或いは誤って更に先に飛び込んでしまい、また元のところに戻る、そう云う複雑な旅のようなものでもある。
小説は順路のある工場の生産ラインのような上から下に流れてゆくだけのものではなく、本来はある程度行きつ戻りつして、その章の中の或いはその章の外のものとを照らし合わせながら、知的な迷宮にわざと遊ぶような娯楽、もっと云えば時間つぶしを目的にしたものである。
しかしそれでは書き手も書きにくいし、読み手もとっつきにくく読みにくいから一応、話の前から後ろに線的に順路が切られているが、本来は適当に真ん中辺を開いて読み、面白いと思えば更に進み、わからないと思えば、前に戻りとして読むのが正しい小説の読み方である。
少なくとも私はそうやって楽しむことにしている。
しかし、コンピュータのディスプレイ或いは電子書籍の端末は全くそういう風に使えない。
スクロールがおそすぎるし、ページをジャンプして探すこともできない。
単語で狙い撃ちに検索できるほどに小説に精通しているならば、わざわざ検索機能なぞ使って脈絡も場面も探しはしないのだよ!
文庫本でも単行本でも或いは説明書や論文であってさえ、必要な単語を探すことは日本語では極めて容易だし、ある程度文章の流れが把握できれば、頻出単語でなくとも必要そうなところを探ることは直ぐにできる。
実態、ヒトによって文章によってその速度は個々時々差があるであろうが、個人的には一秒あればおよそ十ページ近く探すことができる。もちろん探しやすい探しにくいということは大いにあるが、まぁ人の目というものの集中力と文章の読破の量からの類推で探すべきものの位置というものはおおまかに見当がつく。
要するに一秒間に十ページ画面を流して切り替える表示機能を寄越せ、そして直感的にその移動量が分かるインターフェイスを寄越せ。
そう私は云っているわけだ。
そういうことを含めて、ウェブ小説や電子書籍に向いたインターフェイス欲しいよね。
って言う主張だ。
ご賛同いただければ光栄だが、別段異論も多かろう。
文章というものは極めて一方的な性質のものだ。
みな好きにしよう。
もうちょっと読みやすい電子書籍とウェブ小説インターフェイスはないものか。 小稲荷一照 @kynlkztr
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