スマホゲームにハマる

 おうちで私はレンとふたりきり。私は最近あったことなんかを一生懸命語ります。

「それでね、お店にガチャガチャの台を設置したの。そしたらね、それが思ったよりも売れちゃって。それで、どんどん台数を増やしていったのよ」

 けれども、レンはそっけない返事。

「ふ~ん、それはよかったね」

「ねえ?聞いてる?」

「ああ、聞いてるよ」と返事をするレンの顔は、スマートフォンの画面に集中しっぱなしです。

 ここのところずっとこうなのです。レンはスマートフォンのゲームにハマってしまい、1日中こんな感じ。暇さえあればプレイしているのです。

「もう~!ゲームばっかりしてないで、ちょっとは私の相手してよ!」と怒ってみたところで効果はありません。

 逆に、こんな風に言われてしまいます。

「だったら、お前もやればいいじゃん。おもしろいぜ、これ」

「え?」

「ちょうどここのステージ、ひとりじゃクリアーできなかったところなんだよ。手伝ってくれよ」

「ええ~!なんで私が!?」

「なあ、いいだろう?ちょっとだけだからさ」

「もう~、しょうがないわね~」などとブツクサ文句を言いながら、結局手伝ってしまう私。


 それから毎日、レンにつき合ってスマホゲームをプレイすることになりました。

 でも、実際にやってみると、これが結構おもしろいのです。

 このゲームにはガチャというのがあって、強いカードを手に入れるにはこのガチャを回さなければならないのですが、それにはお金が必要です。

 ところが、毎日プレイしていると無料でガチャを回すこともできることがあって、簡単にやめることができない仕組みになっているのでした。

「ログボは忘れずもらっとくようにな」と、レン。

「ログボ?」と、私は聞きなれない単語を耳にして、質問します。

「ログインボーナスな。名前の通りログインするだけでもらえるボーナス。アイテムとか金がもらえる」

「あと、デイクエも欠かさずこなすように」

「デイなに?」

「デイクエな。デイリークエスト。1日1回、効率よく稼げるクエスト。普通にやってるより得だから、これも毎日こなすように!」

「ハァ、ゲームも結構大変なのね。なんだか働いてるのと変わらない感じ」

「あたりまえだろう!おまえゲームをなめてるのか?」と、レンから強い口調で返事が返ってきます。

「え?だって遊びでしょ?」

「遊びだけど、遊びじゃないんだよ!真剣にやらないと他の奴らに勝てないじゃないか!」

「もう。よくわかんないけど、こういうことだけは一生懸命なのね。家事とかお仕事もこのくらい真剣にやってくれればいいのに」

 と、最初はこんな感じで済んでいたのですが、段々とこの程度では終わらなくなってきました。

 レンがスマホゲームに“課金”するようになってきたのです。

 課金というのは、お金を使ってガチャを回したり、強力なアイテムを手に入れたりすることです。

 それも少額ならばいいのですが、段々と使う金額が増えていくのです。

「もう~!いいだろう。人がかせいだ金なんだから、どう使おうが!生活費はちゃんと入れてるんだし、残りは自由に使わせてくれよ」と、そんな風に言うのです。

「だけど、無駄づかいはよくないわ。これから何があるかわからないんだし、ちゃんと貯金しておかないと」

「だ~いじょうぶ!だ~いじょうぶ!なんとかなるって」

 そう言ってレンは取り合ってくれません。

「ほんとかな~?」と、私は心配でたまりません。


 しばらくして、国から派遣されてきた相談員の沖浦おきうら月子つきこさんに、そのことを相談してみました。

「どう思います?ツキコさん?」

「そうねえ。お金の使い方がいい加減なのはいけないわよね」と、ツキコさんも賛同してくれます。

「でしょ?無理やりにでもスマホを取り上げて、やめさせた方がいいと思いません?」

「それはどうかしらね?こういうのは慎重にやらないと。無理に取り上げたりしたら、あとから何をするかわからないわよ」

「ウ~ン、そうかな~?」と、私は疑問だらけで首をひねります。

「そうよ。とりあえず、もうちょっと様子を見ましょう。どうしても無理そうな時には、あなたがお金の管理をするようにするとか、何か対策を立てないとね」

 ツキコさんにそう言われては仕方がありません。私はもうしばらく様子を見ることにしたのでした。

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ミコトとレン 音吹 璃瑠(おとぶき りる) @lilu

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