25. 悪役令嬢物の原作主人公達
さて、先日は悪役令嬢にしかスポットを当てられませんでしたね。
悪役令嬢は悪役なぐらいですから、原作においては必ず必要なキャラクターがまだいます。そう、原作のヒーローとヒロインです。
1. 原作ヒーローとは
そもそも論、主人公は身分的弱者、悪役令嬢は身分的強者であると定義しました。では、ヒーローとなる人物はどうでしょうか。身分的強者の悪役令嬢が恋焦がれ、もしくは執着し、主人公が見初められればシンデレラストーリーとなり得ることからも、身分的強者でなければならないと考えられます。
容姿も能力も優れている理由としては悪役令嬢と同様で、確固たる歴史に基づいています。彼がどのようにして原作主人公と恋に落ちるのかは様々な物語があるので割愛しますが、大半においては「貴族社会にない特殊な行動が珍しくて、気が付けば目で追っていた」でしょうか。
逆説的に、彼の周りには「貴族社会」という身分制度が当たり前のように存在しているはずなのです。そして、そこから逸脱しようとも考えない人生を送っていた、と見るべきです。
それを良しとするか退屈だと感じるかどうかは、それこそそのヒーローの性格によって異なるかと思います。ですが、貴族社会や封建制度というのは男社会でもありますので、家を守る、という意味でも男性であるヒーローの方がより保守的な思想であることは想像に難くありません。
以上のことから、性格としては封建制度が思想として叩き込まれており、それに対して異を唱えることも考えたことがない人物であるかと思います。
では、悪役令嬢との関係はどうでしょうか。
令嬢の方が身分が高い場合、身分が低いヒーローは令嬢の命令に逆らうことができません。なので、原作主人公がどんなに恋焦がれても令嬢の命令に背くようなことはできません。
では、同等の身分であればどうでしょうか。この場合は命令といった形ではありませんが、悪役令嬢が侯爵令嬢だと仮定した場合、更に上の身分があることから、さほど令嬢は執着しないのではないでしょうか。仮に最高権力者の王族同士であれば、他国ならば国力の関係もありますので同等にはなり得ませんし、同じ国であれば同族ですから執着するにも一捻りした理由が必要になるかと思います。
では、ヒーローの方が身分的に強い立ち位置であればどうでしょうか。よく見かける物としては、ヒーローが王太子、もしくはそうでなくとも第二、第三王子といった最高権力に近い立ち位置で、次期王妃として令嬢が励んでいる、といった描写が多くなります。
実際、令嬢が身分の低い原作主人公へ苦言を呈するのは、国母となる覚悟や能力、資質においての苦言もあり得ます。
また、ヒーローが物語上で最高権力に最も近しい人物であれば、身分差について令嬢の他に苦言を呈することができる人物というのはあまり存在しないのではないでしょうか。
2. 原作ヒロインとは
原作主人公と銘打って語ってきましたが、ここではあえて「ヒロイン」とさせて頂きます。失念していましたが、主人公がイコール女性であるとは明言していませんでした。彼女については、シンデレラストーリーの主人公であることから、原作上と悪役令嬢物の人物像がかなりかけ離れた性格となることが多々あります。
ただし、低い身分からシンデレラとして原作ヒーローに見初められなければなりませんから、そのコミュニティに入り込むことができる何等かのきっかけが必要となります。
そのきっかけですが、下級貴族の愛人の娘や特別な力を持っている、といった、本人の努力とは関係のない出自や血筋による物が多くなります。悪役令嬢は言っても上級貴族の令嬢ですから、マナーや勉学等、ヒロインとは比較にならない努力があるでしょう。ここで対比が描かれます。
また、容姿についても令嬢と対比されるかと思います。令嬢が前述した通り、強い美形として描かれることが多いですが、ヒロインは逆に素朴、純真といった表現が多く描かれます。これは、権謀術策蔓延る貴族社会に一切揉まれていない、純真無垢な子供のようである、とも読み解けます。つまり、ヒーローは貴族社会の謀に疲れたときにヒロインと出会い、癒されることで恋に落ちるのです。こういった側面から、ヒロインはいわゆる癒し系美人と描かれることが多くなります。
こうして要素を検討すると、悪役令嬢と原作ヒロインは対照的に描かれることが多くなります。それはつまり、原作ヒーローの好みがヒロインのようなタイプであり、令嬢を好ましいと思わない、という暗喩にもなり得ます。これをどのようにしてヒーローと令嬢の恋愛として成り立たせるのか、といった部分に注力してみるのも面白いかもしれません。
ファンタジー考察論 由岐 @yuki-tk
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