24.悪役令嬢物の悪役令嬢とは
気が向いたときに更新なんてやっていると、書き方を忘れます。
気付けば一年が経つなんてのもザラですね。由岐です。
キャラクターについて深堀しようとしましたが、悪役令嬢だけでかなりのボリュームとなりました。
その他のキャラクターについてはまた次にまわしたいと思います。
1. 身分
ジャンルとしても確立している悪役令嬢。そもそもどんなキャラクターなのかをまずは考察しましょう。新しいジャンルなので、分岐も少なく大体がテンプレ通りになるような気がします。
原作においての強者である、と前項でお伝えしました通り、身分的強者であることが大前提となります。そのうえで、悪役となるべくしてなった性格、もしくはバックグラウンドを持つキャラクターです。深堀すれば面白そうです。
身分的な強者というのは、現実世界で言えば政治家や財閥等があげられるかと思いますが、ではそこで弱者とはいったい誰を指すのか。そこを議論すると炎上しかねませんので、大半は中世欧羅巴をモデルにしたよくあるファンタジー世界を舞台としています。貴族や王族がいる世界においての身分的強者は王族や上級貴族と呼ばれる身分がそれにあたるでしょう。
貴族の身分制度についてはまた後日まとめたいと思いますが、ここで大切なのは上級貴族というのはどこまでを指すのか、ということです。公爵は王家の血を継ぐ、王族と親族であることが多いですので国内の身分的には十分強者となります。そこに次ぐ侯爵というのも同等です。
では伯爵はどうでしょうか。ちょうど公候伯子男の中間、ということでどちらになるかは作品によって異なるかと思います。中級、と称されることもあるでしょうか。ですが、ここに「辺境」が加わればまた身分としては変化していきます。国の外れ、辺境を守る国の要としての役割を負っている訳ですから、侯爵と同等、もしくは侯爵より上位と位置付ける場合もあるかと思います。身も蓋もない言い方ですが、伯爵位に危険手当を加えたら階級が一つ上がった、と考えています。
さて、通常の伯爵位が中級となる、ということは、それより下位の子爵以下はどうでしょうか。特に男爵位となれば、自分より身分が低い者は平民となりますので、貴族社会においては強者となり得ません。貴族や王族がはびこる舞台では、彼らは弱者と呼ばれる部類でしょう。
では、舞台が王族ではなく、平民を中心としたらどうでしょうか。例えば原作の主人公が貧民、孤児、スラム出身など、世間的に「底辺」とされる身分であれば、平民に混じるだけでも十分に立身出世しているように感じます。その中に、男爵の一人娘がいたら。彼女はその集団の中で圧倒的強者となります。主とする母集団の身分の平均を考え、より上位に属する者が身分的強者にあたるのだと考えます。
とは言っても、前述した通りの理由で貴族の物語という色が強いジャンルではありますので、一般的には侯爵の娘、辺りが無難な立ち位置ではないでしょうか。
2. 性格
「悪役」という名の通り、その性格はあまり人に好かれることは少ないようです。とは言っても、自分自身の身の回りを考えてみても、全員が全員その人物を嫌いだ、と感じることは少ないかと思います。また、同じ理由で原作主人公であっても万人から好かれることはないかと思います。
つまりは、悪役令嬢と原作主人公は馬が合わない、もしくは単純に恋敵として描かれるべきだと考えます。
これが身分が同等のクラスメイトや知人であれば、ただお互い喧嘩するだけで終わるでしょう。けれども、これが身分的な強弱がついてしまうことで「弱い者いじめ」の構図が成り立ってしまうようです。
ただ、この構図がたとえ成り立ってしまったとしても。悪役令嬢が人格者であれば表立って批判したりいやがらせをしたりなどしません。ですから、悪役令嬢は原作において人格者であってはならないのです。
では人格者でない、真逆の人間性とはどのような人物でしょうか。
原作主人公の目線から見れば、すれ違いざまに嫌味を言われても言い返すこともできず、身分を盾に我儘放題、といったところでしょうか。その我儘放題というのも程度がありますし、原作の雰囲気によって異なってくるかと思います。
ここで大切なのは、「原作主人公の目線では」という部分です。子ども時代の性格は正にその通り、我儘放題で世間知らずのお嬢様であったと描かれることが多いですが、それを修正できたかどうかが悪役令嬢物のカギとなります。
矯正しないといけないような人格破綻者であれば、そうなった理由が。矯正が不要であればそれはあくまで「身分的弱者である原作主人公側の都合」として悪役と描かれているだけなのです。ここに分岐が現れるかと思います。
例えば両親共に忙しく、我儘は何でも叶えられてもずっと愛情に飢えていた令嬢。彼女に唯一愛情を与えてくれる相手が原作主人公に取られそうなら。愛着形成不全となっている令嬢なら、執着心を持って原作主人公を排除しようとするでしょう。
また、逆に平民から貴族の世界に入った原作主人公が平民の常識を元にふるまっていれば、貴族の常識を持つ令嬢からは眉を顰められるでしょう。令嬢はあくまで目につくその行動に対してのみ、苦言を呈していたとしても。原作主人公からしたらそれは「貴族の都合」であり、ただの嫌味と感じます。そして、その背景については原作では一切触れることがありません。
ただし、この二つの分岐において悪役令嬢に一つ共通点があります。「強い性格」だということです。
気弱な性格であれば原作主人公のバイタリティに負けてしまい、原作においての悪役という役割を果たすことができません。少なくとも、人見知りであってもそれを律する自制心がある強い人物である必要があるでしょう。
3. 容姿・能力
現実世界の婚活市場や学校のアイドルなんかを思い出してみてください。彼ら、彼女らはスペックが高い人物に集まり、中心にいるアイドルはその中からただ一人を選び出します。選ばれる理由はもちろん様々ですが、身分を鑑みれば能力がない人物を選ぶのは非常にリスキーである、と考えるかと思います。
ましてや、舞台としては封建制度が敷かれることが多く、婚姻は家同士のつながりと考えられます。容姿、能力など、何等かの秀でた部分がなければ婚姻を結ぶことは困難でしょう。数多の候補の中から最も優れた一人だけを選ぶのですから、その子孫はやはり双方優れやすくなる、と考えられると思います。
その観点から行けば、悪役令嬢は原作主人公より身分としては圧倒的な強者です。もちろん、その両親であってもかなりの身分を持っているでしょう。ですから、その容姿も能力も受け継いだ物があるわけですから、美形の部類に入るでしょうし能力も十分ハイスペックと呼ばれる物を持っているでしょう。
では、容姿のタイプはどうでしょうか。一口に美形と言っても、癒し系の可愛いタイプから強い女象徴まで、様々なタイプがあります。ですが、これも大体のタイプが決まっています。
原作においては、悪役令嬢は登場時からわかりやすく「悪役」として振る舞うことが求められます。このジャンルにおいて、原作を深く読み解くことができない架空の物語であることから、悪役令嬢はわかりやすく「悪役」である、ということを印象付けなければならないためだと考えられます。柔らかな雰囲気で清楚な可愛らしいタイプの令嬢が、どうやったら第一印象から「悪役」だというレッテルを付けられるでしょうか。それよりも、釣り目で赤や黒が似合う強そうな美人の方が、「悪役」らしく感じるのではないでしょうか。
悪役令嬢物は、「架空の原作を元にした逆転劇」というジャンル故の制約がありますが、この容姿の部分というのは顕著にその影響を受けているのではないでしょうか。
個人的にはほんわかおっとり癒し系美人の令嬢が酷い皮肉や嫌味で人を陥れる、なんて腹黒を見せるのも大好きですが、やはり原作をしっかり読み込むことができないこのジャンルでは中々表現が難しいのではないかと思います。
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