キャラ描写に掛かる地の文のフィーリングの力
はい、今回はキャラの印象を付けるなら地の文もそこそこ大事だよねって話をば。
キャラ描写といっても何もそのキャラの台詞回しだけが表現方法とは限りませんよね。
『目は口ほどに物を言う』なんて言葉も有るように、台詞以外の地の文でキャラの特徴を描く事は、皆さん意識的であれ無意識的であれ実践されているかと思います。
端的には、同じキャラの同じ台詞でも、その前後にくっ付いている地の文の在り様で台詞の印象も変わってくるという事です。
例として、初登場となるクラスメイト男子二人の掛け合いの一部を切り取った場面を想定して書いてみますね。
例一、
「全く、
「ええー、そりゃないよ賢吾ぉ」
例二、
「全く、
「ええー、そりゃないよ賢吾ぉ」
友達同士の会話での一つの台詞。そしてその前に掛かる地の文の一つの違い。
鼻で笑うも鼻を鳴らすも、どっちも相手を小馬鹿にするという意味合いの言葉ですが、こうして並べてみた時の印象はどうでしょうか?
本当に細かな違いではあるんですけど例一の、『で』の方が賢吾の主体性が出ており、かつ『笑う』という言葉がより能動的に彼の小馬鹿にする意志を引き立たせているとは感じるかもしれませんね。
ちょっと嫌味なキャラっぽい印象です。
一方で例二の、『を』は賢吾が故意ではなく不意にそうした感じで、かつ『鳴らす』という言葉は感情的というより動作的で、賢吾は喜亮に対し既に慣れた感じなようにも映るかもしれませんね。
賢吾と喜亮が仲が良いからこそ、そんな軽口も言える可能性を示唆しています。
このように、地の文の中の一つの言葉のチョイスの違いだけで、賢吾自身がどんな性格のキャラなのか、また喜亮というキャラをどんな距離感で見ているのかが差異として表れて、読み手に結構な違いとなってフィーリングで伝わってしまう訳です。
しかしこのフィーリングで伝えるという表現方法は使い方次第で、小説を書く上では中々に優位に働いてくれる要素だと思います。長々とした文章の羅列でやっと表現出来る事を、かなり短縮して読み手に伝える手段足り得るからです。
仮にかっちりと説明を入れようとしたなら……
賢吾と喜亮は普段から仲が良かった。何故なら彼らは去年から同じクラスで、喜亮の慌ただしい性格に賢吾が呆れながらも、何処か放っておけないと思っている、そんな関係だったのだ。
まあこんな感じの文章を挟む事になるでしょうか。
確かに関係の説明にはなってますが、これだけだと何やらありふれたテンプレ関係感が否めないのは私だけでしょうかね?
イマイチ二人が場を動かす役割だけのキャラな気がして、もう少し生っぽい個性のフィーリングが感じられないと読み手が『このキャラ面白いじゃん』とはならない気がします。
下手をすれば『このキャラ、要るの?』とまで思われて、例えその後に深く掘り下げるシーンを書き手が用意していたとしても、そこまで進んで貰えない恐れもあります。
書き手としては、初登場となるキャラ同士の関係性はしっかり印象付けたい所でしょうが、ただダラダラと文章を並べてキャラの関係性を書き連ねてもきっと良い事は無いでしょう。
何故なら、読み手の側としてはそもそも出てきたばかりのキャラに対して、そこまでキャラの個性云々ではなく、個性の薄い地の文だけで表現されたものをしっかりと読み込む程の積極性を持ってはくれないからです。
言葉のフィーリング侮る事無かれ。
そしてそんな言葉のフィーリングを上手く活用して読み手にキャラを理解していって貰う為には、台詞だけでなく、それに掛かる地の文の言葉の選択にもちゃんと力を入れないといけないのです。
生半可な説明文章を長々と羅列させる位なら、フィーリング効果の有る言葉を織り交ぜた地の文を適度に挟みながら、ぽんぽんキャラ同士を掛け合わせておあげなさい。
ぽんぽん、ぽぽんと軽快に! そしたら読み手もキャラが生で反応している姿の連鎖に読む事の飽きが来にくく、そして読み進める内に知らず知らずキャラの関係や個性を把握していけるってもんです。
では今回はこの辺で。また何か思いついたら次回に続きまっす。
キャラ描写の為のほんのスパイス、または香りつけ 神代零児 @reizi735
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