第2話

 

 何でそんなにあの時自信があったのか・・・過去に戻って自分に鉄槌を食らわせたい!とだるい腰をさすりながら学食テーブルに突っ伏した。

 結果は2勝4敗。散々だった。まずは先にあった身体能力測定だ。柔らかい身体を活かして奮闘するも、向こうはさすが現役硬式テニス部だ。軽々と反復横跳びや背筋測定では学年記録を超えていた。

 中間テストでは一番得意な英語、そこそこ得意な国語、日本史の3教科を選んだものの、英語以外は完璧に負けた。もう、完敗だった。



「だからって・・・!こんな仕打ちは想像もしてなかった・・・!」


 いくらなんでも、貞操を奪われてしまうとはさすがに考えが及ばなかった。下僕=パシリに使われる、くらいしか思わなかった。あるいは来年度までは一切予算については口を出すな、であるとか。まさか身体を要求されるなんて。

 

「俺さ。興味はあるんだけどイマイチ踏み込めなかった領域があるんだよね。勝利条件はそれだけだ。付き合ってくれよな?」

 雅空が出した勝利条件は『男と試してみたい』だった。

 いとも簡単に、さらっと。まるで「よう、放課後マック行かねえ?」みたいなノリで言われた。


 まだ誰とも付き合ったことはないし、つい最近恋愛感情なるものを自覚したばかりの15歳である。そして正にその初めての恋愛感情を抱いてしまった相手にただ、男同士のアレコレに興味があるというだけで戦利品にされてしまった。そして恋とは盲目なもので、元々近付くことが容易ではない先輩に合法的に、かつ気持ち悪がられないように触れられるのはものすごく幸せな事なのではないか?!と翔は0.8秒で雅空の出した勝利者の条件に頷いてしまっていた。


 翔は、決して雅空以外の男性には目が行かないので恋愛対象は異性である。そしてこの憧れから始まった恋は告白したり成就させようとは全く考えていなかっただけに、ただただ、後悔の念に駆られていた。その日を迎えるまで、本当に睡眠不足になり、移動授業の際はふらふらと廊下で倒れそうだった。


 


 そして、昨日ついに放課後テニス部の部室に呼び出され。最後の悪あがきで翔は怯えながらも意見してみた。

「せ、先輩が!男の後輩にへ、ヘンなことした、って周りにばれたら!キモがられたり、退学とか!!な、な、なっちゃいますよっ?!」


「うん、お前もな?だから、ナイショ。他の奴等には、賭けの戦利品は一年間パシリに使うって言ってあるからへーきへーき。俺とお前がしゃべらなければ、わかんねーよ。」


 そうだ。自分もキモい対象の一人になり、退学させられるかもしれないのだ。それは、困る!!


 翔には、両親との確執があり寮のあるこの学校に進学した経緯がある。両親は、長男を自分たちと同じように体操選手にしたがった。翔もその希望に応えたかったが、どうにも楽しく思えず辛いばかりで我慢ならず、親とは揉めにもめたが勉強を頑張ることでなんとか折り合いをつけて入学したのだ。だから、問題ごとや退学なんてとんでもない!


「部室の施錠は俺が任されているから、火事とか?よほどの事が無い限り誰も来ねーよ。校舎からも離れてるしな。悪い事するには、ちょうど良いと思わない?」


 ふふ、と意地の悪そうな笑みを浮かべて雅空が言い放った。


「いや、あの、でも!俺は、どこからどう見ても男ですし・・・先輩の期待に応えられるとは到底思えないんですが?!なんで、俺が!」


「オマエ、ばかか?女みてーな男だったら女の方がいいに決まってるだろ。俺はゲイでもなんでもない。ムキムキマッチョとは試したくないから、オマエが手ごろだった、ってだけ。なぁ、ほら。色気出して誘ってみろとは言わねーから、まずは俺のコレ、触ってみ?」


 雅空はそう言って、向かい合って立ち竦んでいる翔の右手を下半身に持って行った。


「えっ!ちょ!まっ!!うわ!」


 柔らかい素材のジャージだからか、なかなかにダイレクトに雅空の形が手の平に伝わる。翔は引かれた腕を雅空にされるがままそこを上下にさすったり、形を変えてくるソコを手の平の上から被され包み込んで揉まされていた。

「ちゃんと、触れよ。動かせよ。これじゃ一人でやってるみてーじゃねぇか。オマエが握れ、よ。・・・・そう、そう。ん、いい感じ・・・。」


 翔の頭の中は、真っ白だった。懸想している先輩に。しかもまず普通の人間では触ることの叶わない場所に触れているのだ。細胞が、心臓があり得ない速さで動いているのを自覚してはいるが、真っ白な頭の中では「どうしよう」が先に立って、うまく雅空のソコを慰めてやることができない。それでも、ぎこちなく指を硬くなってきたそれに絡めれば、雅空の感じている声が聞こえてきた。

 その声にほんの少しだけ(俺が先輩を押し倒してもいいんですか?!)と思ってしまい、覚醒しかけた。それはそれで、問題が無いようであるようで・・・翔にとっては上になろうが組み敷かれようがどちらでもかまわない、とうまく働いてくれない脳で考えていた。

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甘い痛み1 満咲(Masaki) @417masa

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