ナガレモノ

 かわいた破裂音のようなものが頭の内に響いた。

 目の前がパッと白くなる。

 光だ。強い光が私の目を焼いている。

 慌てて目を瞑ろうとするがうまくいかず、仕方無しに光源から背を向けようとした。ぺたぺたと地べたをはいつくばる。硬くてごつごつした地面は震えていた。

 方向転換が終わっても、光は私の視界を白く染め上げ続ける。もっと光から離れなければならないようだ。

 私は前進する。妙に大きな後ろ脚で、近い位置にある地を押し上げ、べたんべたんと前進する。

 光から離れることは出来ているのだろうか。地面の震えは徐々に激しくなっている。

 生ぬるい風が吹き、体から水分をじわじわ奪っていく。視界はまだ戻ってこない。

「あっ」

 誰かの声がした。聞き覚えのあるこれは、信号待ちをしている私の声。


 車が私を轢き潰した。

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アルビノ・ナガレモノ 洞貝 渉 @horagai

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