昼下がりのあなた
瀬夏ジュン
昼下がりのあなた
あなたは、忍び寄る。
この世でいちばん大事な瞬間であるかのように。
あまりに深い謎でみちた瞳の奥。
そこになにがあって、なにがないのか。
わしづかみにされた、あたし。
現実とは思えない刹那。
混乱と歓喜と少しの危惧の渦中。
あなたの身体を触れていいのか、いけないのか。
そうだよ。あたしには分かっている。
だれが悪くて、だれが悪くないのか。
もちろん。あなたには分かっている。
なにを見るべきで、なにを無視すべきか。
別れはふいに訪れる。
腕をすり抜け、ベリーショートをかすめ、放物線を描く。
すべり落ちて去る幸運のように。
つかのま木々をゆらして去る空気のように。
引力の届かない彼方へと去る遊星のように。
さようなら。
もう会えない、あなた。
昼下がりのあなた 瀬夏ジュン @repurcussions4life
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