太陽フレア #2

「…というわけで、当然ながら我々は一切この太陽フレアに関わっていませんが…」


 会見会場から笑いが発生する。

 どうやらこれは成功したらしい。


「強力な太陽フレアですので、日本国内においても停電や電子機器の破損などが発生する場合があります。前例がないため被害は未知数ですが、例え被害が大きくとも、私はいち早い復旧に努めますので、そのときは国民の皆さんにご協力をお願いします。太陽フレアの到達予想時刻は…」


 この会見の1日後、内閣支持率は2%上がっていた。


 いよいよ太陽フレア到達が予想されていた日になった。


「しかし、まさかな…」

「ええ、まさかでしたね…」


 私と秘書は溜息をついた。

 パソコンの画面には動画投稿サイトが映っている。

 映像の上には様々なコメントが流れている。

 生放送である。

 そしてそのタイトルは『ミサイル打ち上げを生中継!?総鮮中心テレビ』である。

 つまり、この生放送は総鮮中心テレビをそのまま映しているのだ。


 …そう、北総鮮国はあろうことかミサイル打ち上げを生中継しているのだ。

 打ち上げまであと数分だが、太陽フレアの到達は間に合うだろうか?

 私は心配になってきてしまった。

 北総鮮国以外には可能な限りバリヤーを張っているので、激しいオーロラで済むはずだ。その点は問題ない。

 問題はこちらだ。発射されてしまったが最後、Jアラートを出して国民に警告せざるをえない事態になりうる。結局いつも日本に着弾するルートを避けたところでJアラートは解除されるため、日本は安全に保たれるのだが、前首相も「Jアラート出しすぎで国民を怖がらせているだけじゃないか!」と支持率が下がっていった面もある。最後は私のぶっかけうどん問題がトドメを刺した形だ。

 いわばこの困った北のお国のせいで私の支持率が下がり得るのだ。

 それでは私の最終的な目標の達成にも支障が出るので、ぜひともミサイルなどやめてもらいたい。

 しかし現実は非情なもので、遂にミサイル発射準備は整ってしまったようだ。


『Jアラートの発令準備、完了しました』

「…そうか、いつでも出せるようにしておけ」


 私は苦々しい顔をしていただろう。

 そうこうしているうちにミサイル発射のカウントダウンが始まり。

 点火。

 噴射。

 そしてミサイルが空中に持ち上がった。


 その時だった。


 画面が暗転した。


『!?』

『ちょw』

『何があった』

『信号切れてんぞ』


 そんなコメントが流れる。

 状況を見ていると、どうやら総鮮中心テレビからの電波が途絶えたようだ。

 もしかしたら、太陽フレアが到達したのかもしれない。

 しかしミサイルが発射されてしまった以上、Jアラートは致し方あるまい。

 そう考えていると、いきなりドアが開いて男が駆け込んできた。


「首相!!!完国大統領府から、電話で、北総鮮国のミサイル発射場付近が爆発したとの連絡が!!!!」

「「なっ!?」」


 私と秘書は同時に反応した。

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