陰謀論?
そのサイトにはこんなことが書いてあった。
『20XX年X月XX日、X33.4の大規模太陽フレアが発生した。これは観測史上最も巨大な太陽フレアである(今までの規模1位は2003年のX28.0)。幸い地球では大きな被害はなかったが、一つどの方面から考えても明確なことがある。それは、この太陽フレアが亞倍政権によって発生させられたということである。その理由としては2つある。一つ目は、亞倍首相が「異次元の圧力をかける」と言ってすぐ後に太陽フレアが発生したということである。ただそれだけではエビデンスに欠ける。これの信憑性を高めるもう一つの理由が、太陽フレアが地球に直撃したにも関わらず、一つの地域を除いて太陽フレアの影響を全くと言っていいほど受けていないことだ。せいぜい低緯度の地域でもオーロラが発生した程度である。では逆に、その影響を受けていた地域とは何処か、聡明な読者の皆様方ならおわかりであろう。ずばり、北総鮮国である。ミサイルが制御を失って地面に吸い込まれ、そのまま爆発するあの衝撃的な映像を目にした人は非常に多いのではないだろうか。この事故は間違いなく太陽フレアの影響である。筆者もあのとき総鮮中心テレビの映像を見ていたが、映像では爆発前に信号が途切れていた。つまりあの画面の暗転は、爆発でカメラが壊れたことに起因するものではなく、太陽フレアが地球に到達したことによるものである。加えて首相が自らわざわざ「我々は太陽フレアなどに一切関わっていない」などと否定しているのだ。亞倍政権がどのような手段を用いて太陽フレアを起こしたのか、そしてどうやって北総鮮国以外への被害を抑えたのかは筆者の知るところではないが、これは紛れもなく事実である。』
と、そんな文が書いてあった。
冷や汗が私の首筋を撫でた。ここに書いてあることは『紛れもなく事実である』。だがそれを知るのは私のみであったはず。
どうして。どこからばれたのか。ばらした存在があるとすれば速やかに抹殺しなければならない。
私がそんなことを考えていると、私の秘書が画面を覗き込んできた。
そして一言。
「ふん、ばかばかしい」
彼女は斬って捨てた。
「科学的根拠のない事実無根の話です。世間にこれを真実と取る人はまずいませんね」
「そうなのか」
「当然でしょう。人間が太陽フレアを発生させることができると思いますか?それもX33.4。過去最大規模ですよ?」
「ま、まあそうだな」
私はまだ落ち着くことができなかった。
本当に人間はこのことを知らずに、勝手な憶測だけで書いているというのか。
それにしては、妙に当たり過ぎではないか。
「ただ、この記事、少し上手いっちゃ上手いのかもしれませんね」
「どういうことだ?」
「事実と巧妙に絡めてるんですよ。生放送に爆発が映らなかったのは事実ですし」
そう言うと彼女は画面から目を離した。
「ま、馬鹿馬鹿しいことには変わりありませんね。総理も、そんなのに気を取られてたら体が持ちませんよ」
彼女はそう言うと、書類を整理する作業に戻っていった。
彼女がそう言うのなら、そうなのだろう。何も知らない浅慮な人間ども(の一部)が書いたのだろう。私をやめさせたい勢力なのだろう。
私は一人で納得して、ブラウザバックのボタンをクリックした。
「PV数、増えてる増えてる。あの魔王の性格からして、こういうの覗かずにはいられないだろうからなあ」
暗い部屋をモニターの光が照らす。
「早く帰ってきてよ、向こうは大変なんだから」
女はそう言ってモニターの電源を落とし、ベッドに向かった。
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