太陽フレア #3

 北総鮮国のミサイル発射場で原因不明の爆発が発生したというニュースは、テレビのテロップとして駆け巡った。

 レーダーは飛翔体を捉えていないため、Jアラートは出さずに済みそうだ。


「やはり太陽フレアの影響でしょうか?」

「さ、さぁ?」


 私は知らぬふりをした。だが、必ずしも太陽フレアが原因とは限らないのでそのまま座して待つ。

 情報は向こうからやってくるものだ。


『えー、ただいま新しい情報が入ってきました。北総鮮国のミサイル発射および爆発の瞬間を捉えた映像がたった今入ってきました』


 NBAのニュースキャスターが冷静に言う。

 映像が切り替わる。

 見たところ、かなり離れたところから望遠で撮影しているようだった。

 だが、映像はしっかりと発射場を映していた。

 映像の中のミサイルが空中に浮き始める。

 しかし、それから1秒も経たぬうちに、ミサイルは地面に沈んでいく。

 そして大きな爆発。

 つまるところ、この爆発はミサイル発射失敗によるものだったのだ。


『映像を見ていると、ミサイルが発射できずに爆発してしまったようですが』


 キャスターの問いに、専門家らしき人物が答える。


『はい、映像を見ている限り、発射直後に制御を失っているように見えます』

『原因は何でしょうか』

『この映像だけではなんとも言えませんが、強力な太陽フレアが現在地球に到達していますので、その影響ということが考えられないわけでもありませんが、仮説の域を出ません』


「太陽フレアですか…」

「まあ仮説だがな。発射場一帯吹っ飛ばされては今更実証もできないだろうが」


 しかし、機械を一瞬で壊すほどの太陽フレアだ。自分で生み出しておいてなんだが、他の国にはバリヤーを張っていて本当に良かったと思う。


「あとはこの機会に日米完あたりで圧力をかければうまいことコトが運ぶな」

「総理、お言葉ですが顔が怖いです」


 秘書は顔色一つ変えずに言った。


 あまりに強力だったため、沖縄でもオーロラが観測できてしまう事態になった。

 私は仕事の休憩がてら、一人で首相官邸の屋上に登った。

 空が光り輝いている。


「こんな光景は、向こうでも見なかったな…」


 私は、自分が魔王だった頃を思い出していた。

 今の私はまだ魔王とは到底言えない。

 まあ、これから日本を起点に世界を手中に収めるのだから特に問題はないだろう。


「さてと、戻るか」


 休憩できる時間はまだ残っているが、私はそれを執務室で過ごすことにした。



「エゴサーチですか?」

「えご…なんだそれは」

「自分の名前をネットで検索して反応を確かめることですよ」


 なるほど、私が今やっていることはエゴサーチと呼ばれる行為らしい。

 だが違う。


「私は国民からの自分の評価が知りたいのだ」


 今後の計画にも関わってくることなのだから。


「それをエゴサーチって言うんですよ…」


 秘書の小さなつぶやきは聞き取れなかった。

 私は目線をパソコンの画面に戻した。

 日本のネットには保守とか右とか呼ばれる人が多いと聞いていたが、確かに多い。

 今検索している限りでは自分たちを持ち上げる意見か左やらを見下す発言しか見ていない。正直言って飽きてきてしまった。


(次の検索結果ページで終わりにするか)


 そう心に決めてクリックし、スクロールする。

 どうせなにもないだろうと決めつけてかかっていたが、私は見落とせないページを見つけてしまった。


 "超巨大太陽フレアは亞倍政権の陰謀!?異次元の圧力とは太陽フレアのことだった!?"


 私の手は勝手にマウスを動かしてそのリンクをクリックしていた。

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