第6話 初めての感触②

一番手前のスイッチを押した時、照準器の画面の右上に、数字が出てきた。

「もしかして…」

敵に照準線を合わせると、数字がだんだん、少なくなっていくのが見えた。

「これだ。」

敵までの距離は、2万キロあった。

「まだ2万キロか…」

大地はとにかく、1万1千キロまで走った。

『大地君、そろそろよ。』

「はい!」

大地は銃を構えた。

1万4千キロ、3千キロ、2千キロ………


「ここだ!」

ちょうど1万1千キロ。

大地は敵に向かって、銃を撃った。

前にいた敵の3機は、ふいをつかれて、煙を上げている。

「やった!」

大地は初めての体験に、ガッツポーズだ。

『その調子よ、大地君!』

「はい!明里さん!」

大地はまた、敵の塊を見つけた。

「次はあっちだ!」

大地がまた敵に向かって、走り出した時だ。

脇の方から、敵が1機、大地の前に現れた。

「え?」


射程距離は、5千キロを示した!

『大地君、逃げて!』

明里の声と共に、敵の銃が、自分に向けられる。

「わっっ!!」

ヤマトの頭の脇を、敵の弾がかすめた。

「……間一髪。」

そして尚も敵は、容赦なく撃ってくる。

「くっ…」

大地は、上に逃げた。

「明里!早く大地に戻ってくるように指示しろ!」

側で見ていた雷人は、明里に大声で、指示した。

「はい!」

今の大地には、かわしながら攻める事など、まだ無理だ。


「大地君。基地に戻って!」

『ええ?もう?』

「敵の数は、少なくなったわ。後は、他のパイロットに任せて。」

『…はい。』

大地が、逃げる為に銃を撃った時だ。

大地の目の前に、ポウッと光るモノが見えた。

「月……」

大地は、ハッとした。


あいつだ。

住良木さんを撃った、あいつだ。

大地は、一旦止まった。

そして、相手も大地を見て、振り返った。


相手にしてみれば、疑問に思っていることだろう。

「大地はどうしたんだ。」

雷人が、明里に聞く。

「分かりません。急に止まってしまって…」

「早く戻るように伝えろ。」

「はい。大地君、大地君。聞こえる?」


言われなくても聞こえている。

だが、目の前には、あのロボットがいる。

相手が、銃に手をかけた。

「明里、あれは敵の新型だ!」

「大地君、早く戻りなさい!」


そして、自分に銃口を向けた。

「大地!早く戻れ!!」

雷人は、明里の交信機を奪って、叫んだ。

大地はそのまま動けないでいた。

『大地!!』


雷人の叫びを聞いた瞬間、敵は銃を撃ってきた。

下へ逃げる大地。

「くそ!!住良木さんの仇だ!」

大地は銃を構えると、思いっきりボタンを押した。

相手は、もう少しのところで、かわした。

が、後ろの敵のロボットは、一気に消滅した。

「ハァハァ…」

大地の手は、ブルブル震えていた。


「すごい…」

明里は、言葉を漏らした。

「これがヤマトの威力…」

雷人も、目を奪われた。

相手は、自分だけが残ったのを知ると、月へと去って行った。

「敵は一機を残して消滅。その一機も撤退。」

センターの中では、少しずつ拍手が起こった。

「ヤマトに帰還命令だ。」

雷人は明里に告げて、センターを出て行った。


「了解。大地君、敵は全ていなくなったわ。今度こそ、基地に戻って来てちょうだい。」

「はい。」

大地は、そう返事をすると、アースシップへと向かった。


船に戻ってきたヤマトを、キャプテンの雷人が迎えた。

コックピットが開けると、雷人は大地に声を掛けた。

「ご苦労だったな。まずまずのデビュー戦だ。」

「はい…」

大地は、俯いていた。

見れば、手が細かく震えている。


「大丈夫か?」

「は…はい…」

雷人は、自分が初めて飛んだ時の事を、思い出した。

「宇宙を飛び回って、敵と戦うのは、怖いものだよな。」

「い、いえ…」

「俺だってそうだった。帰って来た時、大地みたいに震えてた。」

「キャプテンが?」

「みんなそうだ。そうやって、経験していくんだ。」

大地はまだ、下を向いている。

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