幼い頃、お祭りの日に、宮殿の塀の中へちまきを投げ込んだ。塀の中に囲われて暮らすかわいそうな貴族の坊やがそこにいて、そのたった1度だけ、ほんの束の間、心が通い合った気がした。江南に建っていた孫氏の国、呉。その国が滅んで幾年となる頃か。酒の肴に語られる、他愛ない話。ありふれた昔語りのようでいて、背景にあるのは悲愴な戦乱。雰囲気がとてもよい短編で、三國志や歴史物に詳しくなくとも、誰にでも楽しめる作品だと思いました。せつない読後感が素敵。
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