作者様のご紹介どおり、これは異種婚姻譚ではありますが、メインテーマは愛することと、生きること。人間の根幹をなす重いテーマが、人間の醜さが露骨に現れた戦争を舞台にして静かに描かれています。
人間の女性の体と知識を得た水の精霊が、人を避けて独りで生きていたところに、戦争に巻き込まれた外国人ヒデキと出会います。
名前のなかった彼女をミンと名付けた彼に、いつの間に魅かれていくミン。
ミンの正体を知りつつも、自然体で彼女を受け入れていくヒデキとミンは結ばれ、人間社会に混じって家族となります。
生まれた娘と共に、家族としてごく普通の生活を送っていた彼らですが、忘れてはいけないのが、戦争はまだ終わってはいなかったということ。
その残酷な事実が、彼ら家族に突然襲いかかります。
愛することを知らなかった、ただ生きたいという生存本能しかなかったミンが愛することを知る。
生きたいという生存本能があった故に戦争で重い十字架を背負うこととなったヒデキがミンに救われる。
生きようとする人々を救おうとしていたヒデキ。
愛する人と死ぬまで添い遂げることを望んだミン。
彼らの生と愛の行方をぜひ見届けてください。
重く苦しい運命の彼らにも一筋の光が差していたことに、きっと救われる思いがすることでしょう。
物語は、人間の体に宿った精霊と戦地で出会った男との恋愛物語です。
が、ただの恋愛物語ではありません。ベースとなる世界は戦場であり、その描写がエッジの効いたタッチで描かれていますので、息を飲んで読む感覚に包まれます。
この物語の本質は、ジャングルを横断する大河のような壮大な話だけではなく、むしろその水面下を流れる濁流のような心理描写にあるかもしれません。
戦地がベースであるため、生々しい描写もありますが、だからこそ、過酷な環境で出会った二人が惹かれ合う姿は、生を求めるように強く惹かれてしまうのではないでしょうか。
一話としては長い文字数ですが、途切れることなく叩きつけられた作者さまの想い、ぜひみなさまもご一読されることをオススメします!!