第3話 案内

 三島、基山きやま篠原しのわの三人は、それぞれ愚痴を言い合いながら森道を進み、山中にある屋敷に着いた。

「ようこそお越しくださいました。私はこの館の執事の高原龍介(たかはらりゅうすけ)でございます」

 三人は着いた手前、燕尾服を着こみ、髭を生やした初老の男性が恭しくお辞儀をして迎えてきた。

 声からしてスピーカから聞いた声だと三人はすぐに気が付いた。


「お招き下さり、ありがとうございます。夜見山よみやまという姓は珍しくありますが、聞いたことがなかったので、お会いするのがとても楽しみです」

 三島は高原と名乗る執事に軽くあいさつを交わしていくと、後ろの二人も軽く頭を下げた。

「屋敷の中ではほかの方や旦那様がいらっしゃいます。ほかにもご到着されていない人もいますので、もうしばらくお待ちくださいませ」

「わかりました」

 人のよさそうな笑みを浮かべた高原は、三人を屋敷内へと案内すべく扉を開けた。

「お邪魔します」

「こんにちは~~……」

 重々しく音を立てながら玄関に続く扉が開き、三人は高原に着いて屋敷内に足を踏み入れた。


「では、皆様をまずはそれぞれの宿泊部屋にご案内させていただきます。その後で、食堂にお連れいたします。そこで、招待客全員お揃いになるまで、しばらくお待ちいただくことになります」

 全員が屋敷内へ入るのを見届けた高原は、扉を後ろ手に閉めてから三島達の前に戻り、これからの予定を提言した。

「わかりました」

「それではこちらです」

 三島が代表して頷くと、歩き出した高原について行く。

「なかなか、いいお屋敷じゃないですか――。森の中を歩くとは思いもよらなかったですけど……」

「おい、基山、そういう事は本来思っていても言うべきではないからな……?それとあまりきょろきょろするんじゃない」

「……おやじくさいのよ」

「なんだと?」

 案内に甘えていると、周りを見渡す基山に叱咤した三島に篠原は、ため息を吐きながら小さく呟きを怒りながら聞き返す。

「三島様、篠原様は仲がよろしいのですね」

「「どこが!」」

 クスクスと笑う高原の言葉に、二人して意図したわけではなかったが、声を合わせるように反発した。


「では、先に篠原様の個室ですが、階段側の二つ先の部屋になります」

「ふぅぅん……まあ、悪くはないんじゃない?」

 扉を開け室内に入り、綺麗にされている内装を見てから、唇を尖らせ一つでも文句を言おうとしてやめた。


 篠原、基山、三島の順に自室を案内された後、食堂のある場所へと移動を開始した。

 食堂があるとされる大きな扉の所まで案内されると、高原は玄関と同じように扉を押して開けた。

 すると玄関より軽い音を立てて両扉が開けられ、長く白い卓上に数名が各々自由に座っていたり立っていたりして待っていた。

「それでは、三島様、基山様、篠原様。残り二名がご到着されるまで、もうしばらくお待ちください……」

 食堂に足を踏み入れた三人にお辞儀をした高原は、中には入らずゆっくりと扉を閉めていった。

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孤島の探偵たち 星廼薫 @ho4nok

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