エピローグ
「そろそろ電話してくる頃だと思ってたんだー」
『あの、あのときはああ言ってしまったけど、でも……』
彼の戸惑いや遠慮といった気持ちが、電話越しに伝わってくる。
「うんうん、わかるよー。誰だってプロになりたいもんね」
『すみません。それで、その、具体的にどうすれば……』
「それなんだけど。実は
かかってきた電話は、出勤前に名刺を渡したストリートミュージシャンからだった。
「あはは、
彼に詳細を伝えようとしたそのとき、酔っ払って歩いていた<
「ちょっ、こら、<
『……あの?』
「あっ、ごめんね。チョットいま立て込んでて。また
これで彼の紹介料が手に入るし、わたしの立場もまた強くなるだろう。たしかな手応えを感じつつ、わたしは電話を切った。
<
「こら、<
「あはは、はーい」
「んもぅ。滑って転んでも知らないからね」
「あはは、ちゃんと歩いてますよぉ」
降り積もった雪が凍り始めている遊歩道に、わたしはどこか懐かしさを感じながら歩いた。
「それより! 聞いてくださいよ
<
「あのね、
「そっか、おりこうさんだね。だけどホドホドにしないとダメだよ? あんまりやると、喉痛めちゃうから」
「でもね、でもね。僕、早く
「うんうん、だいじょぶだよ。もう、だいぶ近づいたから」
わたしは、あの騒がしい女子高生たちの会話を思い出していた。
柳沢もなにも言わないけど、気づいているはずだ。<
思えば、ここまで来るのは長い道のりだった。こんなにけなげな<
<
ねえ、
だから、
「いっそ乗っ取っちゃうってのも、アリかも」
「えー? なにか言いましたかぁ、
「んーん。なんでもないよ」
「僕ね、僕、
ふらふらとよろけながら、<
そしてふと、子供は立ち止まる。
「ゆき……」
<
「ゆーきー!! 洋香さん『
「雪ならさっきから降ってるってば」
「違いますよぉ! 僕がゴミ袋を変えているときに、
<
よく覚えていないけど、以前そんなこともあったかもしれない。
これまでいろんなミュージシャンを見てきたけど、
ねえ、
皮肉 規村規子 @kimuranoriko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます