by my side ~another eye~
元々スポーツをやっていたのだろう、という俺の予想通り、彼は学生時代野球をやっていた。
一緒に住むことを決め、引っ越しの荷物を片付けたあと、彼の部屋で見つけたものは、卒業アルバムと1冊の小冊子。アルバムは高校時代のもので、その隣にひっそりと並んだその小冊子を、俺は何気なく手に取った。
本棚の片隅に、無造作に突っ込まれているのだから、見られて困るものではないだろう、と判断した。
開くと、そこには今よりもずっと若い彼が、泥だらけのユニフォームを着て、他のチームメイトと笑っている写真があった。
ようするに、これは、部で作った思い出のアルバムのようなものなのだろう。後輩か、マネージャーが、PCとプリンターを駆使して作ったらしいそれには、部の練習風景や、普段のスナップ写真、大会での記録、個人データなどが載っている。
彼は3番サード。副主将。
エースピッチャーでも、4番でも、主将でもないところが、彼らしい。
短く刈られた髪は今とあまり変わりなく、そのまま幼くしただけのような顔。どうやらすでに180センチを超えていたとみられる身長は、チームの中でも1、2を争っている。
個人データが書き込まれたページで、俺は、彼が控えのピッチャーだったことも知った。ただし、公式戦での登板はたったの5イニングと3分の1。そして、3番打者である彼が、ホームランバッターでなかったことも、そのデータが告げている。コンスタントに中距離を打つ、アベレージヒッター。出塁率は悪くない。
大学では特に何もしていなかった、との話だから、野球は高校までだったのだろう。
高校名を確認してみたけれど、俺の知る強豪校には入らないような、普通の公立高校だった。の濃紺のブレザーに、胸元のエンブレム。ネクタイは赤と紺のタータンチェック。
──かっこいい。
制服姿でカメラを向いて笑う写真が、そこにあった。
俺の知らない彼の姿。
「何してるんだ?」
座り込んで写真を見ていた俺の背中から抱きつくようにして、彼が肩に顎を置いた。
「懐かしいもの見てるな」
「野球部だったの?」
「ああ。たいして強いチームじゃなかったけどな」
「3番サード?」
「はは、かっこいいだろ」
「うん」
俺がうなずくと、彼が少し照れたように頬をかいた。ただの軽口のつもりだったのだろう。けれど俺には通用しない。だって、本当に、かっこいいと思った。
「控えのピッチャーもしてた?」
「まあ、3番手だけどな。うちのエースは結構身体もメンタルも強いやつだったから、よほどのことがなきゃ、俺まで回ってこなかった。2番手は一つ後輩で、のちのエース」
「へえ」
ぱらぱらと、手製のアルバムをめくった。彼も俺に背後からくっついたまま覗き込んでいる。
「知らないこと、いっぱいあるなあ」
そこに並ぶのは沢山の写真。チームメイトと楽しそうにはしゃぐ姿や、真剣にグラウンドに立つ姿。チームメイトと肩を組んで写っていたり、走っていたり、おどけていたり。マネージャーらしい女子生徒と仲良さそうに並んで写っているものもある。
「俺、どっちに嫉妬したらいいのかな」
「どっちにもしなくていいよ」
呆れたように笑われた。
「部活の仲間と、ただのマネージャーだ。どっちも何もないから」
「そっか」
「あったら、目の届かないところに封印しておくさ」
「──てことは、封印しなきゃいけないような写真もあるってことだよね」
「……その辺は突っ込むな」
まあ、高校時代の写真にやきもちを妬いても仕方ない。
「チームメイトにそんな感情は持たなかったよ。これは、本当に、ただの思い出だ」
俺はそうだね、とうなずいた。
知らないことは沢山ある。高校時代に野球部だったことは、今初めて知った。きっと、彼が生きてきて、俺と出会うまでの間には、沢山の思い出がある。それをすべて知らずにいることが、悔しいと思った。
彼のことを知りたいと思う、
できれば、何もかも、全部。
出会って、俺はとてもわがままになった。
初めは、見ていられればそれでいいと思っていた。自分の気持ちはひた隠しにしてでも、彼の姿を見つめることが出来さえすれば。
それが、いつの間にか好きになってほしいと思うようになった。俺が彼の一番になれたらいいと思った。
付き合うようになって、ますます貪欲になった。
一緒に住もうと決めたときには、自分でも怖いくらいに、彼を縛り付けそうなくらい好きになっていた。これからは朝も昼も夜も一緒なのに、それでも足りないと思うくらいに。
彼のことを知りたい。
これまでのことも、これからのことも、全部。
「とりあえず」
彼は俺の手から手作りのアルバムを取り上げて、床に落とした。
「今日からよろしく」
振り向いた俺に、優しく笑って、彼がキスしてくれた。
知りたい。
俺は彼の首に両腕を絡める。
彼も、俺のことを知りたいと思ってくれているだろうか?
そう考えたのは一瞬で、そのあとのことは、優しく甘い口づけに酔って、覚えていない。
俺の父親は大学教授で、典型的な教育者の鑑のような堅物である。
母親は専業主婦。こちらはおっとりと、けれど芯は強く、家庭を支える内助の功。お茶や着付け、料理教室、などとカルチャースクールを楽しむ明るい人だ。
そして、年の離れた姉が1人。8つも年上なので、あまり仲良くしていた記憶はない。俺は中学になる頃には医学生で、忙しくしているところしか見たことがなかった。昼間に顔を合わせれば、大抵は学業に浸かれているか、二日酔いで撃沈していた。
この姉がまた、さばさばとした下手な男よりも男らしい性格の持ち主で、しかも成績優秀で見た目も完璧な才色兼備。父親の自慢の娘だった。その姉も今や開業医と結婚し、旦那と2人で医者を続けている。
俺は、昔からあまり人に溶け込むことをしなかった。元々性格も、そんなに社交的じゃなかったのだろう。それに加えてこの性癖である。父親に抑えつけられるのは目に見えていた。だからなるべく口答えせずに、おとなしく過ごした。
この見た目は、昔からのコンプレックス。目立たないように生きるだけで精一杯。いつか壊れないことだけをひたすら祈って、耐えた。
俺がゲイであることを知っているのは姉だけだった。
俺が高校生のある日、姉が、突然、当時はまだ彼氏だった旦那を連れて帰ってきた。両親は出かけていて、なんとなく流れで姉の部屋で、お土産だと渡されたケーキを食べていた。甘いものをあまり好まない姉はコーヒーをブラックで飲み、彼氏はフルーツタルトを食べていた。俺にはチョコとレアチーズと、抹茶のロールケーキをくれた。
「あんたさあ」
俺が3個のケーキをにこにこと食べていると、姉が言った。
「嫌なら逃げるってのも、ひとつの手だからね」
初めは、何のことを言われているのは分からなかった。フォークをくわえてきょとんとしていると、姉はそのきれいな顔にふっと笑みを浮かべ、
「一生黙ってるわけにはいかないでしょ。あんただって、いつかは、好きな男と一緒にいたいって思うはずだから」
驚いた。
俺はそのまま数分、フリーズしていた。
誰にも言ったことがなかった。ひたすら自分の心の奥底に閉じ込めていた。それなのに。
彼氏が、タルトに乗ったイチゴを、フォークに刺した。そして、諭すように姉の名を呼んだ。
「君は、言葉が足りない」
まるで叱るように、短くそう言った。姉は一瞬ばつの悪そうな顔をして、それから溜め息をつく。
「私、こいつと結婚するから。なんと大きな病院付きの玉の輿。金には困らない生活だよ。だから──あの親父に勘当されるようなことになったら、いつでもおいで」
と、隣に座った彼氏をこいつ呼ばわりして、言った。玉の輿、なんて言いながらも、俺は、姉がこの心優しい彼氏にベタ惚れなのを知っていた。彼氏は穏やかに笑い、俺にうなずく。
姉ってのいうのは、すごいな、と思った。
俺は泣きながら、ケーキを食べた。
2人はそんな俺に笑いかけながら、優しく言った。
「かわいい弟のためなら、親くらい敵に回してやるよ」
と。
2人は有能な医者として、今や評判の夫婦だ。男前な姉はバリバリの外科医。そして、おっとり優しい義兄は、その診察も丁寧で信頼できる内科医である。
その言葉があったから、俺はなんとか大学までをその堅物な父親に逆らうことなく生きてきた。俺が大人しく言うことを聞いてさえいれば、父親は何も言わなかったから。
俺の過去は、話していて楽しいものではない。
だから、問われない限りは誰にも離さないつもりだった。たとえ問われても、話そうと思えるくらい仲のいい人間は1人もいなかったが。
だから、今、とても心が揺れている。
俺は、彼に、どこまで話せばいいのだろう、と。
姉の言葉を思い出す。
──いつかは、好きな男と一緒にいたいって思うはずだから。
ああ、そうだな、と思う。
姉の言葉は確かに正しかった。
俺は、きっと一生1人で生きて行くのだと思っていた。けれど、出会ってしまった。
一緒にいたい、そう思う相手に。
彼と出会って、好きなったと気付いたとき、あまりに動悸が激しくて、このまま死んでしまうんじゃないかと思った。
義兄は内科医だ。そして、姉とともに俺の理解者である。思わずその動悸を止める方法がないかと、病院に駆け込みそうにあんった。そんなことをしていたら、きっと姉に末代まで笑い話にされていたに違いない。
だって、仕方がない。
初めてだった。初恋だった。俺の人生で、こんなにも誰かを好きになることがあるなんて、考えもしなかった。
その胸の痛みも、高鳴る鼓動も。
こんな痛みを抱えて初恋をしている小学生や中学生の子たちって、すごいな、と思った。
俺は、それを知らないままに生きてきた。
好きな人のことを知りたいと思うことは、もしかしたら、その延長線上にあるのかもしれない。俺は子供の頃に経験できなかったあのときめきを、今、体験しているのだ。
彼は?
彼は、俺をどう思っているのだろう?
俺を知りたいと思っている?
それを考えると、なぜか胸が痛んだ。
知ってほしいと思っているのか、それとも、知らないでほしいと思っているのか。
その答えを出すのが、少し、怖いと思った。
仕事大好き、男前な姉の得意料理は、たったひとつ。
意外にも思うだろうけど、チーズケーキである。
甘いものが好きじゃないので、ケーキはほとんど口にしない。けれど、旦那は甘いもの好きである。普段は料理をしない姉が、まだ彼氏だった旦那に作ってあげた唯一の料理でもある。
けれど、姉がそれを作る姿を目撃したとき、なるほどな、と納得した。
一番大きいボウルに、クリームチーズ、卵、砂糖、生クリーム、小麦粉、レモン汁を一気にぶち込み、ハンドミキサーで乱暴に混ぜる。
それだけ。
あとはテフロン加工あれた型にがっと流し込み、オーブンに放り込む。焼く。
終わり。
姉らしい、と思った。
砂糖の量は限界まで減らされ、甘みも少ないそれを、旦那は嬉しそうに食べていた。俺も一切れもらったけれど、それは甘くもないし、舌に多少のだまとざらつきを残して滑らかさのかけらもなかった。けれど、不思議と不味くはなかった。
こんなケーキでも、愛する人を笑顔にできるんだなあ、と感心したものだ。
──けれど、やっぱり、美味しいに越したことはない。
俺はカウンターの向こう側で、デジタルスケールで材料を量る彼を見ていた。
クリームチーズに、水切りしたヨーグルト、きちんと絞ったレモン汁──確か姉は、瓶入りの濃縮果汁を使っていた──卵、バニラエッセンス、分量よりもわずかに重さを減らした砂糖、生クリームに小麦粉。
それを、順番にボウルに入れ、ハンドミキサーでかき混ぜていく。
「チーズケーキってさ」
彼が使った道具を洗いながら言った。
「基本的には簡単なんだよ」
確かに、姉が作っていたものと、彼が作っているものは、ほとんどその工程は変わらない。いちいち別に泡立てたり、ふるったり、湯煎にかけたりという面倒なことは一切していない。
「でも、だからこそ、違いが出やすいと思うんだ」
後片付けまできっちり終えてから、今度は夕飯の支度に取り掛かる。彼は多分、キッチンにいる時間が一番長いんじゃないだろうか、と時々思う。
今日はシンプルにうどんである。
だからと言って、彼がめんつゆだけのかけうどんなんて作るはずもなく、そうこうしている間に、作業台の上にはゴボウ、にんじん、しいたけ、かまぼこ、鶏モモ肉、ねぎ、甘く煮て保存しておいた油揚げ、三つ葉に解凍したベビーホタテ、干しエビを並べた。
まずはゴボウとにんじんをささがきに、しいたけはスライス。かまぼこも薄切り。鶏肉はそぎ切り。ねぎは斜め薄切りと、小口切り。三つ葉は5センチくらいに切る。
水とお酒をいれた鍋に、鶏肉とゴボウ、にんじんを入れて火にかける。煮立ったらアクを除いてしいたけとかまぼこを加え、だしの素とめんつゆ、しょうゆで味付けする。
いったん火を止めて、今度はボウルに斜め薄切りのねぎと三つ葉、ベビーホタテと干しエビを入れ、小麦粉と水を加えて混ぜる。スプーンでまとめて揚げ油に落とし、小ぶりのかき揚げを5つ作った。
1人用の土鍋を二つ、シンクの下の引き出しから取り出した。
そこに等分につゆを移し、うどんをほぐしながら入れて煮込む。煮込んでいる間に、手早くだし巻き卵と、残ったかまぼこと三つ葉とレモン汁と醤油で和え物を作った。仕上げは甘煮の油揚げとかき揚げ、小口切りのねぎを散らす。蓋をして、少し煮込む。
テーブルにそれを運んで、ゆっくりと蓋を外した。一気に湯気が立ち上がり、目の前が曇る。
彼の土鍋にはかき揚げ2つ。俺にも2つ。もう一つは? と思ったら、彼がそこに余っていたかき揚げを乗せてくれた。
「さくさくも食いたいだろ」
なんて素敵な提案だろう。にこーっと笑うと、彼が正面で苦笑した。
「いただきます」
両手を合わせて言うと、俺は右手に箸を、左手にレンゲを持ちあげる。まずはレンゲでスープを一口。おいしい。
かき揚げは、さくさくのうちに1個を食べた。
小さな1人用土鍋で煮込まれたうどんはとてもおいしくて、暖かかった。
食べている途中で、オーブンが機械音を発して時間を告げた。彼は立ち上がり、オーブンを覗き込んだ。竹串を突き刺し、うなずきながら取り出した。
「チーズケーキ、今日は食べられない?」
「落ち着いてからの方がうまいからな。──まあ、食いたいなら、切ってやるよ」
確かに、ベイクドチーズケーキは、時間をおいて馴染ませ、冷やして食べた方がおいしい。けれど、出来立てを見てしまったら、我慢なんかできそうにない。
だし巻きは甘めだった。砂糖の入っただし巻きは、俺のお気に入りでもある。しょっぱいのも好きだけど、甘い方がほっこりと嬉しい。
食事が終わり、2人並んで片づけを済ませた。
チーズケーキを一切れ、彼が大きめに切ってくれた。コーヒーを一緒に運んでソファに座ると、俺はそれを一口食べた。まだ生ぬるいそれは、舌触りも滑らかで、とてもおいしい。
彼が口を開けたので、俺はフォークですくってそれを口に運んでやった。ぱくりと食べて、彼がうーん、と首を傾げた。
「どうしたの?」
「──前にさ、お前のお姉さんからチーズケーキもらってきただろう?」
一緒に住み始めてしばらくして、その報告を兼ねて俺は姉に会いに行った。姉は自分のことのように喜んでくれて、俺のために作っておいたのだと、例の荒っぽいチーズケーキをお土産に持たせてくれた。
料理上手の彼に食べさせるのは、なんだか恥ずかしかった。けれど、彼は、それをとてもおいしそうに、嬉しそうに食べていた。
やっぱり舌触りは悪く、ちっとも甘くなかった。
「あれ、すごくうまかったんだよな」
彼の言葉に、俺はえっと驚いた。
「何でだろうな。クリームチーズはだまになってるし、小麦粉も混ざりきってなかったし、砂糖も全然入ってないケーキだったけどさ──」
彼は俺を抱き寄せる。長い腕を回して、抱きかかえるように。俺の身体は少し縮こまり、皿とフォークを持った腕が窮屈に寄せられた。
「すごく、うまかった」
フォークを持つ俺の手を包み込むように自分の手を重ねて、それを操るようにしてケーキをすくい取る。そして、そのまま俺の口元に運んだ。単に俺を構いたいだけなのか、その顔はいたずらっぽく笑っている。だから俺は口を開けた。フォークが近づいてきて、舌に触れた。
口の中で溶けていくチーズケーキ。
おとなしく2、3度されるがままになっていたら、急にぎゅっと抱き締められた。
「お前、かわいいな」
「親鳥に餌もらってるみたい」
恥ずかしさをごまかそうとしてそんな風にそっけなく答えたけど、赤くなった顔は隠しようがなかった。彼はごまかされてはくれなくて、さらにきつく抱きついてくる。
「多分さ」
抱きついたまま、彼が言った。
「お姉さん、お前のことすごく大事なんだな」
考えもしなかった。けれど、mいつだって彼が言っていることを思い出す。
お前が幸せそうにたべてくれるから、すごく嬉しいんだ、と。
「お前のために、作ってくれたんだろ? 大事な弟のために」
「俺の?」
「ああ。お前のために。だから、きっとうまかったんだな」
俺は持っていた皿をテーブルに置いた。
「俺──」
少しだけ身体をずらして、彼の方を向いた。
「あんたが好きだ」
彼は一瞬、驚いたように俺を見て、それから優しく笑った。
「知ってる」
「一緒にいたい。ずっと」
「ああ」
「いっぱい知りたいことがある」
「ああ」
「教えてくれる?」
「──もちろん」
俺は再び抱き締められた。
「いっぱいあるんだ。多分あんたが呆れるくらい。それでも──それでもいい?」
「いいよ」
その声は優しく俺に溶ける。耳元で、甘やかな響きを残して。
「愛してるよ」
俺はぎゅうっと強く、抱きついた。
耳元でささやくような彼の声に、俺は胸がきゅうんと痛んだ。
「──いつか」
彼が、言った。
「いつか、俺にも話してくれ。──お前が話したいと思ったときに」
それが、俺の過去のことだと、すぐに気付いた。
俺はうなずく。
俺には何もない。話すほどの価値もない過去だけ。思い出すこともない過去だけ。
けれど、たったひとつだけ、今すぐにでも話しておきたいことがあった。
あの、出来の悪い、けれどとても愛情のこもったチーズケーキを焼いてくれた。姉の言葉を。
──いつかは、好きな男と一緒にいたいって思うはずだから。
姉さん、その通りだったよ。
俺は彼を抱き締めたまま、そう思った。
そのあとで、優しく重なった唇は、引っ越してきたあの日とおなじように俺を酔わせる。甘さと優しさに酔った俺がそのあとのことを覚えていたのかどうかは──とりあえず、秘密にしておこう。
了
チーズケーキは、本当に簡単です。
けれど、油断すると味が変わります。
きちんと量っているのに、どうしてでしょうか。
体調とか、気分とか、ダイレクトにあらわれるような気もします。お菓子って繊細ですね。
私は、クリームチーズを練るのが結構好きです。塊だったそれを、滑らかになるまで木べらでうんせうんせと混ぜ合わせます。クリーム状になったら、残りは順番に入れてってひたすら混ぜる。手で混ぜても、ハンドミキサーでも、ジューサーでも、何でも大丈夫。
水切りヨーグルトを入れると、酸味とさっぱり感プラスでおいしいですよ。
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