第3話 決戦! 運命の時計台 (後編)

 怪盗紳士Gに呼ばれたルフィーは、ひとり時計台の最上階に着いた。時計台の時計は深夜11時45分を指している。時計台の最上階に、怪盗紳士Gが・・・居た。

 そう、わたしは警察官。どれだけ人騒がせな犯人も、法に従い、しっかりと裁判所に送るの!・・・だから、ちゃんと捕まえるんだ!

 ルフィーは、そう自分に言い聞かせると、毅然とした言葉を発した。

「あなたが、怪盗紳士Gね? ヘイゼル伯爵邸における不法侵入と窃盗の疑いで逮捕します。あなたには、黙秘権があります。弁護人を・・・」

 そんなルフィーの話を、怪盗紳士Gは全然気にしていない様子。しかもルフィーの話をキリの良さそうなところで、遮る。

「悪いな、ルフィー。今夜12時ちょうど、思想犯の刑が執行される。12時・・・あと数分だね。」

 ルフィーは、反論しようとして、不意に言葉に詰まる。怪盗紳士Gは続ける。

「それも、取り返しのつかない刑を、だ。」

「え・・・。」

「ルフィー、俺が何をしようとしているか、わかるか?」

「あ、え、・・・えーと。」

 ルフィーが一瞬とまる。怪盗紳士Gは、その一瞬の隙に、ルフィーを抱きかかえる。

「ちょっ、ちょっと・・・何してるのよ!?」

「お姫様だっこ・・・。嫌?」

「どうする気? それに、何故? 何故、私を呼んだの?」

 不意に、時計の針が12時ちょうどを指した。

「思想犯ルフィー。お姫様だっこの刑。」




 翌日の朝、目を覚ますと大勢の警察官に囲まれていた。警察署の当直室のベッドだ。そして、同僚の声。

「あ、ルフィーさんが目を覚ましましたよ!」

「ルフィーさん、無事でよかったわ!」

 何してたんだっけ? ルフィーは、記憶が曖昧だった。普通、それを単に寝ぼけているという。

「思想犯はどこへ?」

 ルフィーの質問に答える者は居ない。ルフィーが無事だとわかると、皆、すーっと逃げた。入れ替わりに、当直室の入り口まで部下のギルバードが小走りに走ってきた。

「無事でよかったぁ~。今朝の朝刊なんだけどさ・・・”月をバックにした時計台の最上階の写真”。それがね、『美人すぎる女性警官、怪盗紳士Gとお忍びデート』のキャプションなんだよぉ。もうルフィーさんどうすんの?」

「やらぁ。美人すぎるだなんてー。・・・・・・、こほん。事実誤認があるので、あとでしっかり皆さんに説明します。」

「しっかりしてよー! 頼むよ、ルフィーさぁぁぁん!」




 20分後。ルフィーは、急ぎ足で、上司エーベルトの元に報告に行った。行かなくてはならないからだ。でも、このドアを開けるのもこれで最後となるのだろうか。ドアをノックする。

「失礼します! ルフィー、ただいま参りました。」

「ああ、ルフィー君。さっき戻ってきてたギルバート君と面白い案を話していたところなんだよ。」

「え・・・。」

「まあ、椅子にかけたまえ。怪盗紳士Gの身長や体格がちょうどギルバート君くらいだから、囮捜査をしようってことになったんだ。」

「あの・・・。」

「いいじゃないか。あ、でも、もちろん断ってもいいんだ。ギルバート君がニセ怪盗紳士G役でルフィー君とニセデート。そこで、嫉妬して現れるであろう本物の怪盗紳士Gを王都警察が全力で逮捕!どうだ!!ガッハッハッ!!」

 ルフィーは、話の展開の速さにいささか混乱している。

「あの・・・しかしですね・・・まずは・・・私の話も・・・聞いてください・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怪盗紳士G vs 王都警察 まろうソフトウェア工房 @marou_software_kobo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ