一縷

霧生神威

第1話 必然の出会い?

初めましての方も、残月夜を拝読して下さっている方も、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


神威と申します。

今回新しい連載を開始致しました。


残月夜共々どうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m


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世界が平等に出来ているなど、誰が言った?


世の中は酷く不条理で理不尽な事ばかり。

何が正義で、どれが正解なのか。


全てが不透明で薄っぺらいモノで構成されきっている現代に、果たして身を粉にして働き、必死に生にしがみつく理由はなんなのだろう。


ボクには皆目見当もつかなかった。


___だって、この世界で生きる価値など有りはしないのだから。





***


ボクはごく平凡な高校生である。

何か特別に秀でている事もなければ、目立つわけでもない。


性格も明るいとは言えないが、友人に困ったことはない。

もちろん、学校でイジメにあっているなどという事も一切ない。


ただ少し家庭環境が複雑というだけだ。

だが、今の世の中それが特に珍しいというわけでもない。

ボクと同じような人間は、この地球上に数えきれないほど存在しているだろう。



母は幼くしてボクを産み落とした。

そうだ、ちょうどボクくらいの年齢の時だろう。



騙されやすく、一度信じると疑うということをまるで知らない、良く言えば純粋、悪く言えば無知な人間である。別にそれが悪い事だとは言わない。


だが、幾度痛い目を見ても尚それを改善しようとしない。

我が母ながらにして学習能力というものが生まれつき欠如しているようだ。


その母がつい先日、ボクに信じられない言葉を告げた。



『運命の人に出会ったの。だから律、悪いけどもう一緒には過ごせないのよ。』



バカだ、馬鹿だ、と思ってはいたものの、我が子よりよく分からない男性を信じている事実に驚いた。悲しいとかいう感情は特にない。


それほど母にはなんの期待もしていなかった。

むしろこの歳まで育ててくれてありがとう。


そんなことさえ思った。

ここまでは良かった。


施設にでも入って、未成年を脱するまで悠悠自適に暮らせば良いだけのこと。

だが、物語はボクの思惑とは裏腹に激しく水面下で進行していたのだ。



『律、お母さんが幸せになるには、どうしてもお金が必要なの。分かるでしょ? 世の中お金なしじゃ何も出来ない。だけどね、お母さんが一緒になる人には借金があってね、それを返済しないといけないのよ。』



この言葉が始まりだった。

男にそそのかされた母は、あろうことかボクに保険をかけ、殺害しようと計画していたのだ。


流石のボクもこの時は驚きを隠せなかった。



『お母さんのために死んでくれるよね? 律はお母さんの幸せを望んでくれているのでしょう?』



この人は何を言っているのだろう。

自分勝手にボクを産み落とし、ろくに世話もしてこなかったくせに、自分のために命を捨てろと。


ここは時代劇の舞台か何かだろうか。

母のために命をかけるなんて、お涙頂戴のシーンなのだろうけど、ボクにはそんな気は毛頭ない。


その意思を母に告げると、一瞬にして表情が強張り、見た事のないような修羅の姿へと変貌を遂げ、近くにあった包丁を強く握りしめ、ボクへと振りかざす。


ただ、あまりにも興奮状態だったためか、空を切るだけでボクにはかすりもしなかった。



『……ねぇ、律はどうして生きるの? 誰にも望まれてないじゃない。私は望まれているの! 貴方とは違うのよ?』



偽りの優しい声色でボクの人生そのものを否定する言葉を投げかけ、母はその場に泣き崩れた。



『あなたのお父さんなの。律、あなたのお父さんなのよ! 私の運命の相手。そして貴方の命で借金を返済しようと提案したのも彼よ!!』



衝撃だった。

まさか自分の本当の母と父が息子の命を金に換えようとしているなんて。

まるで換金システムのようだ。


要するにボクは貯金されていた。

そう聞こえた。


では、ボクはただ息さえしていれば良かったのか?

そもそもボクには思い出はいらなかったと?

そういうこと?



『律、別に生きていてもいいことなんてなかったでしょう? だから終りにしましょう?』



確かに特別いいことはなかった。

だが、に生きてきたつもりだ。



『貴方が生きている限り、私は幸せにはなれない。だからお母さんは貴方が死ぬまでずっと追いかけていかないといけないの。』



ここで逃げても永遠にボクを殺す機会を窺うってことか。

母に殺される恐怖に怯えながら生きていく………。


そこまでして生きる理由が今のボクにあるだろうか?

母のように何かのために生きようと思えるものがボクに存在する?


生まれてずっと理不尽な扱いを受けてきた。

世の中なんの苦労も知らずに、のうのうと生きている人間が溢れる返るほど存在しているというのに。


ボクはその人たちの苦労や苦痛を引き受けて、その成果で生かされているのではないか。

なら、こんな世界にはボクからお別れを告げてやる。


むしろこっちからこんな世界で生きるのなんか拒否してやる。

だからボクはこう答えた。



『死ぬ場所は自分で選ぶ。それでいいでしょ? お母さん……。』



そしてボクは今東京の夜景が一望出来る高層ビルの屋上に立っている。

街の灯りが星の輝きをかき消すほどの眩くカラフルなこの世界。


今ボクはそんな世界に別れを告げる。

表面だけの彩りなど無意味だ。


一旦殻をかち割ると、ドロドロと醜く汚い液体で地球は満たされている。

誰か一度割って試してごらんよ?


____ね? ボクの言ったとおりだったでしょ?



そう言ってあげるのに。



ボクは大きく息を吸い上げ、リラックスするように吐き捨てると、ゆっくりと歩を進め両手を広げる。

別に未練なんてなかったけど、いざ死のうと下を見下ろすと足が震える。


『死』なんて怖くない。

無になって消えるだけ。


こんな高いビルの上から飛ぶんだ。

痛みなんて感じる暇はない。


分かっているのに足がすくみ、肝心の一歩がなかなか踏み出せない。

ボクは再び大きく息を吸う。



「あんたさ、さっきから何してんの? 飛ぶなら早く飛んでくれない? 見ててイライラすんだけど。」



突然後ろから聞こえた声に咄嗟に振り向くと、あまりにもビルの淵に立っていたせいか、ちょっとした強風に煽られただけでユラユラと身体が揺れ動く。



「わぁっ!! 落ちるっ!!」


「ちょうどいいじゃん。良かったね。運命が後押ししてくれて。」



そうか、運命がボクの死を望んでいるのか。

ボクはこの時初めて何かに望まれた気がした。


その期待に意味なく応えたいと強く思った。

死ぬ間際にボクを望んでくれてありがとう。


ボクはニッコリと笑みを浮かべ、頬を伝う涙を地面に落としながら、その身を投げた。



___さようなら、世界。



そう、ボクはここで命を終えるはずだった。



「……どうしてボクは生きているのでしょう?」


「さぁ? 何故でしょう?」



もう開けることのないと思っていたボクの瞳が捉えたのは、真っ赤な髪をビルの突風に激しく揺らす、ひどく美しい容姿をした少年だった。


燃ゆるような赤髪の下には、全てを見透かしいるかのような銀色の瞳がのぞいていた。


同性だというのに、胸が激しく高鳴りをみせる。

少し中世的な顔立ちをしている彼のせいだ。



「あんた、最期笑ったよね? 泣きながら笑った。」



少年は不意に疑問を投げかけてくる。

そう言われても実際自分がどんな表情をしていたかなど、覚えていない。



「泣きながら笑って死ぬって、意味不明じゃない?」


「あのよく分からないんですが、ボク笑ってました……?」



少年は未だ不思議そうな顔をしてこちらを見続けている。

一体どんな答えを彼は望んでいるのだろうか?

なんと答えたら満足してもらえる?


ボクは必死に考えたが、少年の表情からは何も読み取ることが出来なかった。



「まぁ、いいや。分からないなら。それじゃバイバイ。」


「え?!」



言葉と同時にボクの手を掴んでいた彼の力が弱まっていくのを感じた。

ちょっと待って。今?! ねぇ、今なの?!!


覚悟した時に逝かせて欲しい。

どうしてこんな生きていることに、どこかホッとした抜けている自分にそんな事が出来るんだ?!!


気づいた時には少年の腕を強く握り返していた。



「なんだ、結局死にたくはないんだ。」


「か、覚悟が消え失せたんです!!」


「覚悟ねぇ~……。で、どうしてほしいの?」


「え?」


「だから、どうしてほしいんだって言ってんの。このまま後押しして強引に手を離しても良し、コッチに引き戻してやっても良し。さぁ、あんたはどうしてほしい?」



一瞬考えた。

だって生きていても無意味な事実は何も変わらない。

なのに、どうして生きていたかったと思ってしまったのだろう。



「早くしろよ。腕が疲れて怠い。」


「……生きたいと思ってしまったんです。死のうと一歩踏み出した瞬間に。あんなに覚悟して世界を見捨てたのに……、運命まで望んでくれたのに、やっぱりイヤだなんて思ってしまったんです……。」


「あっそ。」



少年はボクの言葉を最後まで聞く気はないらしく、すぐに自身の胸元へとボクを引き戻した。



「はい、良かったね。これで生還。」



棒読み状態でそう告げると、踵を返すようにビルを後にしようとする少年の姿を見たボクは、自分でも何故だが分からないが、強く引き戻してしまった。



「………なに?」


「な、なんなんでしょう……?」


「は?」


「なんだか今置いて行かれると不安に押しつぶされそうで……。」


「へぇ~、ご愁傷様。んじゃ、俺はこれで。」


「だから、朝まで一緒にいてくれませんか?」


「は……?」


「朝まででいいので、お願い出来ないでしょうか?」


「ネカフェにでもいればいいと思うんだけど……?」


「一緒にいて欲しいんです!!!」



凄い剣幕で迫るボクに少年は呆れたのか、めんどくさそうに息を吐く。



「あんた、名前は?」


「律!黒田律って言います!」


「そ。んじゃ、律。俺とお遊びしようか?」


「はい!!」



___ん? お遊び?



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ご拝読頂きありがとうございましたm(_ _)m


大好きなBLものなので、筆がのりまくりました!


残月夜の方はあまりBL要素を組み込みつらいので、こちらで妄想を書き連ねてみました。


もし奇跡的に気に入って頂けたら、ブクマや評価など頂けると大変嬉しいです!


また、残月夜の方もよろしくお願い致しますm(_ _)m


どちらとも更新はしていきますが、特に曜日とかなく、書きたいものを優先的に仕上げていこうと思うので、毎回交互に更新とかではないので、ご容赦くださいませ。


読みたい方やツイッターなどで優先してほしい作品があれば、遠慮なく申して頂けると幸いです!


意識的にそちらを書いて上げていきたいと思っております。


そんな方がいらっしゃれば…ですが…w
















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一縷 霧生神威 @kamui_kiryu

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